トランプ大統領の敵は中国でもイランでもない

米中貿易戦争やイラン攻撃の裏にある「真実」

話をトランプ大統領に戻そう。カギとなる経済政策では、パパブッシュの失敗を学び、どんどん先手を打っている。3月末に金利市場で3カ月物と10年国債の金利が逆転する現象が起きて以来、共和党系の市場メディア(ダウ・ジョーンズ社傘下のWSJやバロンズなど)では、強烈に利下げへの「プロパガンダ」(政治宣伝)が展開された。

FOMC前に6月のFFレート先物が利下げを織り込んだのはそのためだが(結果は利下げなかった)、そもそもFEDの緩和策には利下げ以外にもいろんな手段がある。前NYFED総裁のウィリアム・ダッドレー氏などは、最早参加者の少ないFFレートを下げるより、FEDの当座預金への付帯金利を減らす方が緩和の効果が高いと主張している。

そんななかで、共和党保守派とその市場関係者が頑なに利下げを主張したのは、長短金利の逆転期間が長くなると、そこから6カ月から16カ月で、必ず実体経済が後退するという「オーメン」が理由だ。そのタイミングで不景気が来ると選挙戦には最悪である。それはトランプ大統領の再任だけでなく、すでに下院を失った共和党全体にとっても受け入れられない悪夢だ。

このように、ありとあらゆる手段で2020年に勝利しなければならないトランプ大統領にとって、目先最大のイベントはもちろんG20だ。イラン攻撃を中止したのは、北朝鮮を訪問した中国の習近平国家主席をG20前に刺激しないためだろう。

「再選のためにトランプ大統領がどう動くか」を考えよ

いうまでもなく、中国との貿易交渉は米中覇権争いの一環だが、アメリカの要請を無視してイラン産原油を買い続ける中国の狙いは、拡大している自国通貨建ての原油先物市場を守ることだ。自国通貨でエネルギーが取引されることは、一帯一路の成功では必須であり、イランはゴールド(金)で担保された元で中国に原油を下ろし、必要ならそのゴールドをドルに代えて、アメリカの経済封鎖を生き抜くはずだ。イラクのサダム・フセイン大統領もリビアのムアンマル・アル・カダフィ大佐も、ドル以外の通貨での原油取引を模索し、結果的にそれぞれの理由で殺された。

アメリカからすれば、イランの抜け道と、中国が自国通貨を一帯一路内で基軸化させる野望の2つを潰す必要がある。G20では、この米中の駆け引きに、ロシアからのミサイルシステム導入をやめようとしないトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が加わる。トランプ大統領個人ではなく、その取り捲きたち(ディープステート)が考えるG20でのアメリカの立ち位置は、①中国の覇権はゆるさず、②イランは高い枝になった最後の果実であり、③トルコがロシアのミサイルシステムを導入することは容認しない、というものだ。この状況をトランプ大統領がどう処理するのか。何度も言うが、今のトランプ大統領の最優先課題は①~③ではなく、あくまで再選を果たすことである。

次ページあのルーズベルト大統領も「選挙フリー」ではいられなかった
マーケットの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 内田衛の日々是投資
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
  • iPhoneの裏技
  • 埼玉のナゾ
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
電池開発でノーベル化学賞<br>吉野彰氏が示した「危機感」

受賞会見とともに、リチウムイオン電池の開発の歴史と当事者の労苦を振り返る。世界の先頭を走ってきた日本も、今後および次世代型の市場では優位性が脅かされつつある。吉野氏率いる全固体電池開発プロジェクトに巻き返しの期待がかかる。