東京のオフィス「空室待ち」がなお衰えない理由 2018年の大量供給ピークを過ぎても需要活況

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「人材確保のためには、魅力的なオフィスを提供する必要がある」(米不動産サービス大手JLLの大東雄人アソシエイトディレクター)。今やオフィスは企業の成長に欠かせない投資となっている。

ウィーワークをはじめとするシェアオフィスの急増も、オフィス逼迫の一因になっている。オフィス仲介会社のビルディング企画の古川徹・取締役営業部本部長は、「テレワーク(在宅勤務)の普及でオフィスは小さくなるはずだった。ところが、自宅でもオフィスでもないシェアオフィスで働くニーズが生まれ、新たな床面積の需要が生まれた」と語る。

ザイマックス不動産総合研究所の調査では、1人当たりのオフィス面積は2011年の4坪から2018年には3.85坪へ減少。一方、多くのフロアやビル1棟を丸ごと借りるシェアオフィスが普及したことで、オフィス不足が加速している。

空室無さすぎもよくない

デベロッパーにとって満室稼働はうれしい反面、テナントニーズを取りこぼすこともある。「空室がなさすぎると、テナントの館内増床ニーズに対応できず、ほかのビルに移られてしまうことがある。ビル内に多少の空室があるほうが望ましい場合もある」(三菱地所の相澤浩之・ビル営業部統括)。

活況を呈するオフィス市況だが、エリアによって濃淡がある。晴海やお台場といった湾岸エリアは賃料が月坪2万円台と一見割安に映るが、引き合いはそれほど強くないという。オフィス仲介・空間プランニングを行うヒトカラメディアの野田賀一・企画開発部リーダーは、「都心から外れているため、従業員の交通費で賃料の安さが相殺されてしまう。災害時に交通が寸断されると、従業員が孤立するリスクもある」と指摘する。「(湾岸エリアは)賃料を安く抑えたい企業のニーズを何とか拾っている印象だ」(住友不動産の山下竜弥・ビル事業本部ビル営業部長)。

賃料上昇もリーマンショック以前に比べると緩やかだ。JLLによれば、東京のグレードAオフィスビルの月坪賃料は、リーマンショック直前の2007年に約5万2000円を付けたが、足元では4万円弱だ。「リーマンショック以前は利回りから賃料を逆算した投機的な動きが目立った。今は実需に基づいた値付けのため、上昇は緩やかだ」(住友不動産の山下氏)。

東京五輪後の2021年や2022年に竣工するビルにも、続々とテナントが内定している。にぎわいが途絶えることはしばらくなさそうだ。

『週刊東洋経済』6月29日号(6月24日発売)の特集は、「沸騰!再開発バトル」です。
一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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