グーグルは「家」を賢くできるのか? グーグルのネスト買収とスマートホームの難しさ

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たとえば、iPhoneからコントロールできるとしてネストを使い始めたユーザーにとって、iOSのサポートが終わることを危惧するかもしれない。もっとも、この点は、ほぼすべてのグーグルプロダクトがMacやiPhone、iPadで利用できること、Google GlassであってもiPhoneアプリをリリースしていることなどから、さほど心配はいらないだろう。

Re/codeの報道によると、ネストの生い立ちからアップルとともに歩む道を期待したユーザーとは裏腹に、アップルはネスト買収そのものに興味を示していなかったと見られている。アップルはこれまでも、自社製品の現在の弱みを補強したり、将来の製品に生かせる技術やアプリを有する企業を買収しているが、すでに完成された製品の買収に興味がないこともあるだろう。

意識される「つながっていない」ことへの安心

また、グーグルによる買収そのものに対しての心配も聞かれる。グーグルが検索広告で利益を上げている企業であり、どちらかというとプライバシーよりもオープンを好む社風である。そのため、たとえば「ネストのディスプレーに広告が届くのではないか」「現在の室内環境に対して+1(Google+での「いいね」ボタン)ができ共有されるのではないか」といった不安の声も上がる。

これらは冗談もしくは皮肉だとしても、自宅の家というプライベートな空間で活躍するスマート家電が、グーグルという巨大ネット企業の傘下に入ることには、一定の抵抗感があることは確かだ。光熱費がカットでき、放っておけば最適な環境をもたらしてくれるスマート家電は、新鮮かつ便利であり、未来感にあふれている。しかし、すべてがつながることに、NSAの件もあって抵抗感を覚えるとの意見にも納得できる。

ネストは収集するデータを活用しないことをウェブサイトでも表明しているが、スマートだけれども「つながっていない」家電へのニーズが新たに生まれるかもしれない。しかしそれは、日本の家電メーカーの製品が、全自動や自動認識、環境配慮などをボタンひとつで勝手に判断してくれる製品そのものではないだろうか。

たとえば日本の洗濯機には汚れを自動的に判断する機能がついているが、これは汚れ具合を計測しながらフィードバック制御をし、キレイになれば洗濯をやめるという方法が用いられていると推測できるが、ユーザーにとってこの点は必要ないため、ブラックボックスにされている。

ネストは、行動パターンや加熱時間に対する室温の変化などの学習は、こうしたフィードバックから得られるが、そうした学習結果を本体やアプリで可視化できるようにしている。日本の家電との違いは、こうした演出面であることが大きい。インターネットの接続によって、気象条件を取得できることも効率性につながっている。

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