2020東京チームの師、プレゼン必勝法を語る

東京五輪プレゼン/マーティン・ニューマン氏インタビュー

プレゼン1分につき、8時間練習

――招致のプレゼンで目指した「ムード」とは?

2020年の招致を始めるにあたり、石原元知事に尋ねた。「どんなムードがいいでしょう」と。そのとき、彼がこう言ったんだ。「SHINING」とね。後で、昔、彼がそんな本を書いたことがある、と聞いたこともあるが、私はぴったりだと思った。だから、すべてのプレゼンにその「ムード」がほとばしり出ているようにした。

マーティン・ニューマン
過去25年間、グローバルな政財界のトップを指導するコミュニケーション戦略立案のプロ。ウラジーミル・プーチン首相へのコーチングによって2014年ソチ冬季オリンピック招致を成功させた。過去に指導したリーダーには、ウェールズ・ヘンリー王子殿下、デイヴィッド・キャメロン英国首相、 潘基文国連事務総長などがいる。2月下旬に著書『パーソナル・インパクト 「印象」を演出する、最強のプレゼン術』が発売予定

私はあくまでもコーチであり、舞台裏にいる人間だから、私がプレゼンの、終着点を決めることもできない。だから「ムード」はしゃべる人が決めなければならない。

――どのように指導したのか。

プレゼンターはそれぞれ、英語力には差はあったが、まずはリラックスさせるところから始めた。英語ができる人は最初から「ムード作り」に取り組んだ。招致にかかわるすべてのプレゼンテーションをコーチしたので、足かけ2年にわたる付き合いになった。猪瀬さんには「プレゼン1分につき、8時間練習してください」と言った。10分であれば80時間ということだ。リハーサルや自分での練習を合わせて、それだけはやってもらえたと思う。

何度も言うが、プレゼンはスポーツのようなもの。トレーニングが必要なのだ。日本には「一生懸命」という言葉がある。まじめにやるメンタリティでやればできる。ワークハードのコンセプトは日本人にとって新しいものではないので、できるはず。ただ、一生懸命さが、プレッシャー、ストレス、緊張につながる。だからそこにFun(楽しさ)が必要。楽しい気持ちが加われば、マジックが生まれる。そうやって、東京のプレゼンテーションになった。一生懸命さとFunのコンビネーションが重要。

――具体的なアドバイスとは

プレゼンをドラマチックにするために導入した高等テクニックがいろいろある。たとえば、太田雄貴で初めて試したテクニックがある。ほかの競合都市と比べて、東京は世論調査の支持率が低かったこともあり、日本人が五輪に非常にエキサイトしていることをIOCに見せる必要があった。「日本人の(オリンピック・パラリンピックにかける)情熱は50万人が平日の銀座に集まったことからもわかります」という銀座でのパレードのエピソードがあった。そこで、どのようにエキサイトメントや情熱を見せるのか、考えた。

声を大きくする、というのは当たり前だ。エキサイトすると人間は、心拍数が上がる。息も早くなる。ファイブハンドレッドサウザンド(50万)、という数字のすごさを「息」で表現しようと考えた。深い息をして、すぐにはき出しながら、言葉を細かく早く区切って発声するようにした。あたかも、ゴールしたてのアスリートが興奮さめやらぬ調子で叫ぶような感じだ。それで、エキサイトメントが伝わる。

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