新卒採用は「氷河期」入り、焦る学生は安定シフト《特集・雇用壊滅》

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 学生が志望業種を練り直す動きも活発化している。「倒産リスクが低い鉄道・ガス・電力などに志望をシフトしている。そのほうが、両親も安心してくれる」(慶應義塾大学・男子学生・第一志望はマスコミと総合商社)、「昨年考えていた証券会社や外資系の生命保険会社への応募は、もう考えていない」(法政大学・男性・志望業界は未定)との声には、今年度に特有の危機感がうかがわれる。

不安に駆られ、資格取得に励む学生も増えてきた。資格取得支援学校TACでは「昨年12月単月の新規受講者数が、前年同月比20%弱増加」(鎌田浩嗣取締役)している。学校法人大原学園でも「今年は特に中堅大学層からの申し込みが多い」(浜政輝・カスタマー部課長)という。

人気があるのは、公認会計士と公務員の講座だ。特に公認会計士には応募者が殺到。金融庁主導の合格人数拡大の方針もあり、07年の合格率は14・8%へ7割増加した。4大監査法人に入れば、初年度年収は基本給500万円プラス残業代が確約されるのも、「学生には破格的な魅力」(TACの鎌田取締役)のようで、さらにブームは過熱していきそうだ。

人材ミスマッチ解消には採用の構造転換が必要

上級生(現4年生)の相次ぐ内定切りを目の当たりにし、防衛本能に駆られる学生が多いが、背景には企業の採用方法の問題がある。新卒時の一発勝負の要素が強すぎるのだ。

さらに、現在は内定から翌年4月の入社式まで1年もあるため、景気の激変期には内定切りの温床となりやすい危険性も内包している。各大学の就職課は、学業重視の観点からも、就職情報会社主体での就職活動の早期化・長期化を問題視、その是正を求めてきた。

それに対して、就職情報サイトで掲載企業最大を誇るリクナビの岡崎仁美編集長は「働くことの意識づけは早いほうがいい」と反論する。というのも、過去2年は売り手市場だったものの、企業側の評価は「求める学生が思うように集まらなかったが、基準を下げてまで採用しなかった」が65%強を占めたからだ(リクルートワークス研究所の調査)。企業は欲しい人材をまだまだ発掘しきれていないのだ。

求人倍率が激減しても、採用のミスマッチがあるかぎり、学生にも活路はある。大学側でも、就職関連の授業に単位を与えたり、大学主催で就職セミナーの開催を積極化したりして、就職率の向上に躍起だ。

武蔵野大学では「ゼミの教授が積極的に学生に就活の状況をヒアリングしている。学生は教授には悩みなども相談しやすいからだ」(伊藤文男・キャリア開発課長)。

学生が自分の適性を把握して、それに合った企業を探すことができれば、人材ミスマッチの解消が進むだろう。結果として内定切りのリスクも最小限で済むかもしれない。

ただ問題は、生産が縮小する中で企業の体力が残っているかどうかだ。採用の構造転換が迫られながらも、まずは足元の採用人数を絞りたい企業が多い。卒業後に無職の「就職浪人」になりたくない学生にとって、長く厳しい冬が続く。

(週刊東洋経済)

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