「電子ゴミ」を美術品に変える男のガーナ奮闘記 不法投棄された物をお金に変え世界を変える

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アグボグブロシーでの長坂氏(写真:福田秀世)

2019年1月、国連環境計画など国連7組織や世界経済フォーラム(WEF)などは、世界の電子ゴミの年間排出量が4850万トンにのぼるという推計を発表した。

今や、電子ゴミの増加は、地球規模の課題となっている。

先進国では誰もが手にするスマートフォンやPC、テレビ、ゲーム機……。これらの電子機器はあくまでも全体の廃棄物の一部にすぎない。大量消費・大量廃棄社会の裏で、大量に発生した電子ゴミは、発展途上国に不正に輸出されているのが現実なのだ。

資本主義社会の光と影

だが、長坂は、別の角度からこの事実を捉えていた。

「資本主義社会が間違っていると言う人もいるけれど、僕は、間違ってないと思っています。誰だって競争が好きで、誰だってお金を稼ぎたい。だからこそ、私たちはこの日本で豊かで平和な暮らしをしている。

(グローバル資本主義の反動で)例えば、脱プラスチック化だけでなく、大量消費社会の考え方を何もかも否定しだしたら、僕たちは石器時代までに戻るのかと。そんなのは無理ですよね。

『プラスチック化する青年』(写真:福田秀世)

だから、僕はアートで今をどう変えていけるかに挑戦しようとしています。

つまり、今までのように消費しながら地球環境がよくなることをしたい。

経済と環境保全と文化。これをサステイナブル(持続可能)の3軸だと思ってるんですけど、これをちゃんと取り込みながら、循環型の社会をつくっていきたい」

では、具体的に自分のアートを使って、どのように循環型社会を作ろうとしているのだろうか。

その答えが、冒頭の作品『サステイナブル・キャピタリズム』の中にある。長坂は、電子ゴミを利用して描いた絵を売り、その収益を投じて、ガーナのスラム街を変えようとしているのだ。2018年には、自らの作品の売り上げでガーナに学校を作った。現地の教師への給料も絵の売り上げで賄われている。さらに2019年には、美術館も作るという。

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