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小売・Eコマースの未来像(1)

「絶対的価値」を突き詰める

では、百貨店業界の規模はどうかと言いますと、残念ながら、かつて9兆円あったのが、瞬く間に6兆円に減ってしまっています。Eコマースの規模の約半分になってしまった、ということです。

大西洋(おおにし・ひろし)
三越伊勢丹ホールディングス社長執行役員
1955年生まれ。1979年慶応義塾大学商学部卒業後、伊勢丹(現三越伊勢丹)入社。紳士統括部長などを経て、2008年3月に三越常務執行役員、伊勢丹常務執行役員に就任。09年より伊勢丹社長。12年2月より現職

なぜ百貨店業界がダメになったかというと、これは「百貨店だから」とか「リアルな小売の店舗だから」ということとはあまり関係ないと思うんですね。どこでも同じことが言えると思いますが、同質化してきて、明らかに競争力がなくなっています。気がついたら、マーケティング力がなくなっていて、収益力と競争力が低下してきたということです。

では、どうすればいいんだ、という話ですが、お客様の変化についていけていない、最たる業態になってしまっている以上、抜本的なイノベーションと改革なくして復活はないということです。イノベーションと言うのは簡単ですが、人がイノベーションを起こしていかないといけないので、なかなか力の要る仕事だと思っています。でも最終的には、お客様が評価をすることなので、お客様にどれだけ新しい価値を提案できるかがポイントだと思っています。

ブルーオーシャンとレッドオーシャンという言葉もありますが、当社は「相対的価値と絶対的価値」を、常にひとつひとつ評価してきました。当社としては、絶対的価値を突き詰めていくことに力を入れています。

相対的価値というのは、「AとBとCを比べて一番いい」というふうに、他社との比較によって選ばれる価値です。それに対して、絶対的価値は、最終的に人の心を豊かにできます。「こんなものがあったんだ」とか、「これはここでしか買えないんだ」という、本質的な価値を追求していきたい。

それから先ほど、(Eコマースの小売全体のシェアが)7%というお話をしたように、市場占有率は非常に大事ですが、それと同じく、ひとりのお客様に対してどれだけの「ウォレットシェア」を自分たちのなかで獲得できるかがポイントかな、と思っております。

将来的にはアフリカまで視野に

では、今何を考えているかというと、1つ目に、これはもう大きなビジョンというか、方向性だけですが、これだけ有形無形の新しい価値のあるものがたくさん出ている世の中では、自分たちの“編集力”を活かして、新しい価値を生み出していくことが重要だと思っています。

百貨店はどちらかというとファッションやブランドといったものを扱ってきましたが、今後は、それよりも、人、歴史文化、学び・知識、習慣・スタイルといったもの、アート、コンテンツ、音楽のところも百貨店として新しく提案していかないと、リアルな小売業としてはやっていけない、と思っています。

2つ目は、これだけITが進歩している中で、世界同時に同じ情報がつかめるわけですから、「世界のライフスタイル」をちゃんと提案していくべきだと思っています。海外のライフスタイルを、そのまま導入するのは難しいですが、今はブラジル、将来的にはアフリカまで視野に入れて、世界のライフスタイルを提案していきたい。

グローバルというキーワ―ドについては、私どもは百貨店なので、海外に店舗をたくさん出すのは限界があります。ですので、ネットの方たちとコラボレーションしながら出て行かないと、グローバルとはもう言えないかな、と考えています。アメリカの百貨店は、すでにネットのシェアが50%を超えていますので。

3つ目に、百貨店ですので、地域とか街とか、地元の行政と一緒に成長していきたい。これは「地方で地元に」というイメージよりも、首都圏のお店で、1つの建物だけでなくて、その地域とともに成長していくというイメージです。いわゆる“ソフト”というか“コト”の部分を、百貨店で情報吸収しながら情報発信をしていかなければいけない、と考えています。

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