「5G導入」で注目集まるアメリカ企業の覇権争い 負けられない戦いに挑む米国の通信IT企業

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5G関連銘柄というと、専門家ではない素人は、どうしてもスマホやPC、ネットワーク機器とそれらを構成する半導体やデバイスなどがイメージされるものだ。しかし、これだけの大きなインパクトのあるテーマでは、関連分野はそれだけにとどまらない。

5Gでは前述のとおり、5Gに対応した専用のデバイスが開発されている。また、ミリ波というこれまでモバイル通信では使用されてこなかった周波数帯が活用される。こうした場合、各種デバイスの機能からネットワークの接続まで、確実に実用化につなげるまでにはいくつものテストが必要になる。こうしたテストのための計測機器やソフトウェアを提供しているのがキーサイト・テクノロジーズ(KEYS)だ。

同社は、ヒューレット・パッカードの電子計測や化学分析などの事業を分離して誕生したアジレント・テクノロジーから2014年11月にスピンオフして誕生。その後2017年に同業のイクシア買収により、ソフトウェアのラインナップが大幅に強化されている。

大容量データがやり取りされる5Gでは、より強固なセキュリティーが求められる。ファイアウォール製品を展開するパロ・アルト・ネットワークス(PANW)は、クラウドベースのマルウェア検出・分析技術などを搭載した次世代型で急成長した企業だ。

基地局を多く保有する企業にも注目

5Gでは複数の周波数帯の電波が活用されること、そして新たにミリ波と呼ばれる高周波帯の電波が加わることは先に述べた。このミリ波は大容量データの伝送には適しているが、その代わりに電波の飛ぶ距離が短くなる。そのため、5Gでは電波を中継するためのセルと呼ばれる小型の基地局が多数必要になる。こうした通信の基地局やインフラを保有している代表的な企業がアメリカンタワー(AMT)やクラウンキャッスル(CCI)だ。

前者はアメリカ国内に4万1000施設、グローバルベースで約13万施設を保有し、通信放送用のタワーや基地局、アンテナシステム、屋上空間などのリース、関連サービスを提供している。同社はこの5月に、アフリカで約5500の通信サイトを保有・運営する企業を買収すると発表している。後者は4万以上の無線通信用タワーのほか、6万5000以上の小型セル、それらをつなぐ7万マイル以上の光ファイバーネットワークを保有している。

ただ、両社ともにREIT(不動産投資信託)であり、『米国会社四季報』(2019年春夏版)では掲載対象になっていない。また売買できる証券会社も限られているので、注意が必要だ。

5Gは経済的、社会的インパクトが大きく、本稿で紹介した企業だけでなく、今後も関わる企業は増えてくることが予想される。今のところ通信やIT関連を中心とした事業展開にとどまっているが、あらゆる産業に広がっていくことが予想される。異業種間での協業・提携なども一部では動き始めている。5Gをめぐる動きからますます目が離せない。

加藤 千明 ファイナンシャル・プランナー、「アメリカ企業リサーチラボ」運営

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かとう ちあき / Chiaki Kato

大手証券会社勤務の後、1993年7月、東洋経済新報社に入社。主に統計指標をベースとした刊行物を担当する一方、電機・化学業界担当記者としてITバブルの全盛期と終焉を経験。その後は、マクロ、マーケットおよび地域動向を主戦場に、データをもとにした分析、執筆などを行う。2005年より『東洋経済 統計月報』編集長、2010年より『都市データパック』編集長。『米国会社四季報』編集部を経て、2021年2月に退社。現在はファイナンシャル・プランナーとして活動するかたわら、アメリカ企業の決算情報を中心にSNSで発信。

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