「5G導入」で注目集まるアメリカ企業の覇権争い 負けられない戦いに挑む米国の通信IT企業

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5Gで真っ先に動いたのはベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)。昨年10月にロサンゼルスなど一部の都市で「5G Home」という家庭向け5Gサービスを開始。そして今年4月、今度はシカゴとミネアポリスでスマホの5G商用サービスを開始している。

地域通信会社だったベル・アトランティックが2000年にGTE社を買収して誕生した会社で、傘下のベライゾン・ワイヤレスが展開する携帯事業が売上高の7割を占める中核事業となっている。

2015年にネットサービスのAOL、2016年にはアメリカ・ヤフーを買収するなどネットワーク事業も手がけている。4G LTEで先行した同社は、現在全米3億2650万人と人口の98%のエリアをカバーしている。5Gでも先行しており、5G関連を含めた設備投資額は2018年が169億ドル、2019年も170億~180億ドルを見込んでいる。

対するAT&T(T)も、2018年12月からアトランタやヒューストンなど12都市の一部で5Gモバイルサービスをスタートさせている。2019年前半には、さらにラスベガスなど7都市の一部にも拡大する予定だ。

同社の前身はグラハム・ベルが設立したベル電話会社で、かつては電話事業を独占していた。現在は、電話事業のほかブロードバンドサービスも展開し、アメリカ国内ではベライゾンと2強体制となっている。

2015年に衛星放送のディレクTVを買収し、翌2016年にストリーミングサービスを開始、2018年には司法省との法廷闘争の末、タイム・ワーナーを買収するなど、コンテンツやメディア事業にも注力している。

携帯事業者も5G対応を進めている

携帯事業者も準備を急いでいる。全米で携帯3位のTモバイル(TMUS)は、2019年中の商用化を目指し、600MHzという低周波帯のネットワーク構築を進めている。

同社の資料によると、このネットワークは2019年3月時点で約3500市町に達しており、2020年には全国ネットワークが利用可能になるという。同社は今年1月、インテルやスウェーデンのエリクソンと共同で600MHz帯を使った5Gのデータ通信とビデオ通話実験に成功したと発表している。

同4位でソフトバンク傘下のスプリント(S)も、5月よりアトランタやヒューストンなど4都市で5Gサービスをスタート、さらに2019年前半のうちにニューヨークやワシントンなど5都市でもサービスを開始するとしている。

この両社は2018年4月に合併で合意したものの、競争が阻害される恐れがあるなどの理由からアメリカ連邦通信委員会(FCC)や司法省などが厳しい審査を続けている。両社は合併によるシナジーを生かすことで、5Gなどの分野で2強と伍していきたいとの思惑もあるが、ここにきてニューヨーク州など10の自治体が合併差し止めの訴えを起こすなど、先行きは不透明な状態にある。

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