日経平均2万3000円回復の可能性が出てきた 今のFRBの動きは1998年に酷似している?

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すべての株式投資家はいい意味でも悪い意味でも、「トランプ政権の不確実性」に向き合わなければなりません。2019年5月には米中貿易戦争の激化といった悪い意味での不確実性に多くの投資家が翻弄されたとは思いますが、私は2019年後半にはいい意味での不確実性が株価を押し上げるのではないかと見ています。というのも、トランプ政権は次期大統領選に勝利するために、景気を吹かす政策を実行してくるだろうと予想しているからです。

私はトランプ政権が発足した頃、あれだけ巨額の大型減税を実行するとは予想ができなかったのですが、大型減税によって景気拡大の期間が1年半~2年くらい延びたことは間違いありません。そのうえ、政権がFRBに対して1%の利下げを要求するという「蛮勇」を振るうなど頭の片隅にもありませんでしたが、現実にパウエル議長は半ば政権の圧力に屈しています。

再選に向けて景気拡大を継続させたいトランプ政権は、FRBの利下げへの流れに重ね合わせるように、新たに「2兆ドルのインフラ投資」を実行したいと考えています。野党である民主党とも4月末に協議入りすることで合意しているのです。「FRBの利下げ」と「インフラ投資」といった経済金融政策の両輪によって、たとえ米中貿易戦争が長引いたとしても景気は後退しないという戦略を描いているのかもしれません。

いずれにしても、トランプ政権はアメリカの景気を無理にでも吹かし続けることで、2020年まで景気拡大を持続させようという強い意気込みを持っています。そのような背景を加味すると、米中貿易戦争が2019年中に収束したうえで、2兆ドルのインフラ投資が実現する見込みが立つようになれば、世界の景気や株価はアメリカを起点に再び加速することが予想されるというわけです。

そういった意味では、米中貿易戦争が続いている間は、強気にも弱気にもならず中立的な投資スタンスを保つ一方で、米中貿易戦争が収束するや否や、強気の投資スタンスに転換する柔軟さが求められています。また、「フェドウオッチ」から読み取れる年内の利下げ回数が1回になるのか、2回になるのか、その確率はどのように推移するのか、注意して見ておく必要があります。

米大統領選の先にある深刻な危機を忘れてはならない

世界的な金融緩和は景気減速の下支え役として機能しますが、債務の膨張が止まらないという副作用をもたらします。それに加えて、過去の景気拡大期には債務が減るのが当たり前だったのに対して、今回の景気拡大期には債務の拡大が続いているという異常事態にあります。世界的な債務拡大に歯止めがない状況を見ていると、「今後1~2年は楽観、その先は総悲観」といった姿勢を変える必然性はないでしょう。

次に訪れる景気後退期には、不況の度合いも株価の調整も通常の不況より大きくなることは覚悟しなければなりません(『次の世界的な不況はとてつもなく大きくなる』(4月30日)参照)。本当の投資のチャンスはその時にこそやってくるのですが、そのチャンスは『2019年後半に投資の大チャンスがやってくる』(1月31日)で申し上げた時期である「2019年後半~2020年」から1年半~2年程度先送りとなり、2021~2022年あたりが株式の絶好の買い場になるのかもしれません。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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