暴言や失言でも「維新」が支持を失わない理由 巧みな「ふんわりとした気分&イメージ」醸成

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しかし、都構想実現の過程でさまざまな問題やハードルがより鮮明になることも危惧している。検討課題が多すぎるこのビッグプロジェクトは2025年大阪万博と同時並行で進めることが可能なのか、特別区への移行に伴うコストは計画以上に膨らまないのか。また、人口60万~70万の政令市と同じ規模を持つ特別区が、財源も権限も"都"に手足を縛られた中で自主的な行政が可能なのか等々である。

以上のように、維新が党勢を伸ばした背景には大阪の特殊事情があったのは間違いない。バブルに浮かれバブルが弾けた大阪という土地の「空間軸」と、大阪府・市の行政ミスから年月が経たない「時間軸」との"交差点"で維新が登場し、最大限のパワーを得ることになった。何度も言うが、維新は時流が味方したラッキーな政党である。

大阪だけの現象ではなくなる

ただ、これらは大阪に限った問題ではない。いずれどこの都市でも、また東京都でも起こりうることである。小池百合子都知事が登場した背景には、舛添要一前都知事の公用車問題や政治資金による家族旅行の問題が存在したからだ。これは、かつての大阪府・市のデタラメ行政の余韻が消えぬうちに橋下氏が府知事になった背景と似ている。代表を辞任して勢いが落ちたとはいえ、希望の党を立ち上げるまでのプロセスも維新の誕生を彷彿とさせる。

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条件さえ整えば第2、第3の維新は必ず誕生する。橋下徹的な政治シンボルが東京に現れてもおかしくはない。そのとき、改革を掲げる"ヒーロー"の登場に拍手喝采で迎え入れる有権者も数多く出てくることだろう。だが、ときに歴史は冷酷である。最初はヒーローだと信じていた人物や組織が、年月の経過とともに「裏切られた」「しまった」と思わせないとも限らない。事実、そんな史実は国内外で少なくない。

維新はヒーローか、それともアンチヒーローなのか。有権者に、あるいは地方自治や国家にメリットを与えてくれる政党なのか。神ではない私たちは後世の行政学者や政治史家の判断を待つしかないが、それでも現象だけを見て熱に浮かれるのではなく、政治や政治家を冷静に見つめる目だけは持ちたいものである。

吉富 有治 ジャーナリスト

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よしとみ ゆうじ / Yuji Yoshitomi

1957年愛媛県生まれ。石油会社などに勤務後、金融専門誌や写真週刊誌の記者に転身。その後、フリーランスの記者として週刊誌や月刊誌に社会問題や経済事件のルポを執筆。近年は大阪市政や大阪府政を主な取材フィールドとして活躍している。著書に『大阪破産からの再生』(講談社)、『橋下徹 改革者か壊し屋か―大阪都構想のゆくえ』(中央新書ラクレ)、『大阪破産』『大阪破産第2章―貧困都市への転落』(以上、光文社ペーパーバックス)、『緊急検証 大阪市がなくなる』(140B)など。

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