暴言や失言でも「維新」が支持を失わない理由

巧みな「ふんわりとした気分&イメージ」醸成

維新の人気もこの延長線上にある。大阪市の暗黒史から10年以上が経過しており、なおかつ橋下氏以前の歴代市長も市政改革は進めてきたのに、維新は今も「大阪市を過去に戻すな」というキャッチフレーズを大阪ダブル選や統一地方選で多用した。「既成政党(自民党など)は大阪市を過去に戻し、既得権益を失うことを恐れている」とことさらアピールすることで、市民の不満感情に新たな火をつけた。

これらの巧妙な心理作戦により、有権者の気分を「大阪市の改革はまだまだ必要だ」というベクトルへと誘導することに維新は成功した。ただし、同じ手法を自民党や公明党、共産党が真似たところで、おそらく誰も信じないだろう。有権者の意識は、すでに「維新はすごい」「維新は信頼できる」で支配され、事実そう思わせるだけの現象が大阪の街に現れたことも無視できないからだ。

維新は時代の波に乗ったラッキーな政党であると思っている。維新が誕生して大阪府政と大阪市政で力を持ち始めたのは、リーマンショックから立ち直りつつあった2012年以降の時期と重なっていた。そこに加えて近年、関西では外国人観光客の増加でインバウンド効果が出始めたり、2025年大阪万博の誘致成功により大阪では景気アップの高揚感に包まれている。

もっとも、これらすべてが維新の政策のおかげではない。万博やインバウンドにしても、例えば関空の滑走路整備など政府や大阪府・市の両議会の支援も無視できず、為替レートの変動といった経済的な外部要因も大いに貢献しているのは言うまでもない。

漠然としたイメージによる支持

それでも維新の宣伝は巧みだ。いいことは維新のおかげ、悪いことは既成政党が原因といった善悪二元論的なデフォルメPR作戦が功を奏し、大阪府民と大阪市民はさらに維新に信頼を寄せることになる。 

統一地方選の前半、私は大阪市内で維新候補の演説を取材しつつ、何人かの支持者と話をした。とくに印象的だったのは、大半の人がふんわりとした気分で維新を支持していることだった。中には「維新になってから役所の対応はスピードが増した。市営地下鉄も民営化され、ますます市民には便利になる」という具体的な成果をあげる人もいた一方で、「都構想とか難しいことはわからへんけど、松井さんや吉村さんはガンバってはると思うで」といった、半ば漠然としたイメージで維新を支持している人が目立ったことである。

有権者がこのような感情を持つのはなぜか。さまざまな外部要因があるにもかかわらず、高揚感のある大阪の街や経済の姿を自党の政策の成果だとする、いわば維新の巧みな宣伝効果のなせるワザなのかもしれない。彼ら維新がプロパガンダに長けた政党なのは、長く同党を見続けた取材者として痛いほど感じている。

都構想に関して言えば、各マスコミの直近の世論調査を見ると大阪市内に限っても都構想に賛成する有権者は反対者を上回っている。この流れであれば次回の住民投票は賛成多数になるだろうと私は考えている。おそらく都構想は実現し、その瞬間、政令市・大阪市は行政上も地図の上からも消えてなくなる。そして次は堺市の番だ。いずれ堺市も政令市から特別区へとスケールダウンするだろう。

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