暴言や失言でも「維新」が支持を失わない理由 巧みな「ふんわりとした気分&イメージ」醸成
余談だが、この衆院選で維新の候補者が負け続ける中、大阪の選挙区で当選したのが丸山穂高衆院議員である。ビザなし交流で訪れた国後島で戦争発言をして国会から糾弾決議を受けた丸山議員。彼が世間と国会から「退場」を命じられながら強気でいられるのは、他の維新候補が衆院選挙区で軒並み敗北しても、自分は勝利したという自負があるからではないかと推察する。
話を戻そう。橋下徹という政治的シンボルを失い、維新は求心力を失うかに思えた。国会議員を抱える日本維新の会は支持率も振るわず、離党した丸山議員をはじめとして暴言議員、失言センセイが同党の足を引っ張っている。また、地方に目を向ければ維新の党勢が大阪並みに伸びる気配もない。
だが、大阪に限れば維新は強い。圧倒的に強い。結党から今日までの間で維新に愛想を尽かして同党から逃げ出す府議や市議がいたり、選挙違反で逮捕された市議がいても、どうしたわけか大阪の有権者は維新を見放さない。それどころか、今回のダブル選と統一地方選、そして堺市長選を加えてのトリプル勝利である。
大阪市と堺市の両政令市は維新が完全に牛耳った。自民党大阪が力を失って迷走し、公明党が維新の軍門に降ったことで都構想実現の可能性は一気に高まった。今後のスケジュールでは、都構想の設計図を作る法定協議会が6月末から再開され、来年夏には完成。来年の秋には2度目の住民投票が実施される予定である。一度は敗れた都構想も実現しそうな勢いだ。
なぜ維新は大阪で強いのか。逆に言うと、なぜ大阪限定の政党なのか。東京や他府県に住む人とこの話をすると、誰もがここがわからないと口をそろえる。維新最強の理由はさまざまだが、その背景の1つには大阪府と大阪市の特殊な事情がある。大阪の暗黒史だ。
大阪の「暗黒史」
2004年から2005年にかけ、大阪市はマスコミと世間の集中砲火を浴びた。ろくに働かない市職員や労組の組合員を異常厚遇した問題が続々と発覚し、そこにバブル期に建設した数々の巨大な箱モノが経営破綻したというマスコミ報道が相次いだからである。
大阪府も同様に、関西国際空港の対岸に建設した「りんくうタウン」などさまざまな開発に失敗。それまでは金持ち自治体だった大阪府と大阪市は、箱モノ政策の失敗とズサンな公金感覚で巨額の借金を背負うことになった。当然、府民と市民は怒りの声を上げた。
その後に登場したのが橋下徹氏である。彼は大阪府の改革を公約に2008年1月、府知事選に立候補して当選。府民から大歓迎を受けたのは、まだまだ消えやらぬ大阪府と大阪市への不満がナニワの街に充満していたからである。
例えて言えば、ガスが充満した部屋に少しでも火花が飛べば大爆発を起こすようなものだ。見方を変えると、もし橋下氏がバブル経済の真っ最中に登場すれば、あそこまでの熱狂で迎えられなかっただろう。
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