就活セクハラが根本的には防ぎきれない理由 ごく少数の異常犯罪者は社会に混ざっている
そして、ここが議論の中心になった論点ですが、もし会社のルールを破ること、さらに法律を破ることに罪悪感を持たない人物が会社に紛れ込んでいた場合、会社には何ができるのかということです。
通常起こりえるセクハラ事例のかなりの部分については前記のようなルール化に一定の防止効果があります。たまたま就活相談に来た異性の後輩がどんぴしゃの好みのタイプだったためにOBが恋愛感情を抱き、それを不器用にくどきはじめるうちに事態がエスカレートするといったケースの防止策としては、会社の就活セクハラ防止ルールは機能しそうです。
特殊犯罪事案を企業は防ぐことができるのか
しかしごく少人数ではあるけれども社会に存在する、犯罪に罪の意識を感じない人物が引き起こすケースはどうでしょう。立場の弱い就活生を物色しながら、確信犯でパワハラやセクハラを行って、それを楽しむような人物の場合の話です。
これは経営者の側はいっさい口にはしないことですが、1万人もの従業員のいる会社の中には一定の確率で犯罪に痛みを感じないタイプの人間が入り込んでいることは珍しくない。犯罪の専門家はそう断言しています。そしてそれは普通の社員と見分けがつかない。そのような人物が最初から確信犯で就活生を取り込んで精神的支配下に置き、最終的に性的犯罪に至るような特殊犯罪事案を企業は防ぐことができるのか、ということです。
議論をとことん突き詰めると、結局のところそれは制度では防ぎきれないという結論になりました。制度を守らないことに対して痛みを感じない人については、会社の制度が無力な部分があるのは当然なのです。
そこまで議論をすれば、社員による就活セクハラを防止する話と、社員が性的犯罪で就活生から訴えられた場合の話は、会社にとっては実は違う問題になります。
経営者はそんなことは口が裂けても言えませんが、実は後者は起きてしまった段階で会社は謝罪と補償以外にやれることはない。刑事事案であり専門家である警察に任せるべき事件です。実社会には性犯罪者を更生させる施設も存在します。しかし会社はその専門家ではない。できないことに介入すれば判断や対応を間違うことになります。
冒頭に紹介した事例がどのような背景で起きたのか詳細はまだわかりません。ひょっとすると事件自体は防げた問題だったかもしれません。しかし今回議論したような犯罪者についての諸外国の研究成果までを考慮すると、少なくとも社員の肩を持ってセカンドレイプを引き起こした人事部長のような行動は、責任者としての職務だと捉えた場合も、企業の組織防衛行動だったとして考えてみたとしても、それは愚かな行為だったのではないでしょうか。
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