就活セクハラが根本的には防ぎきれない理由 ごく少数の異常犯罪者は社会に混ざっている

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ではその被害の内容はというと「性的な冗談やからかい」が4割前後と最も多いのですが、女性への被害で2番目に多いのが「食事やデートへの執拗な誘い」になります。

例えば20代女性被害者では30.8%の人がこのデートへの誘いの被害を受けたと答えていますが、被害者の比率の12.5%×デート被害の比率30.8%という単純計算をすると20代就活生の4%弱がこのような「就活プロセスでのデートの誘い」という被害を受けているということになります。つまりこのような被害例は結構多いわけです。

入社したい企業のリクルーターから個人的な誘いを受けた場合に就活生がそれを不快だと感じながらも、多くの就活生が「相手が決定権や評価の権限を持っている」ことから仕方なくそれに応じてしまう。これは就活セクハラの中でも重大な問題で、毎年何人もの学生がそこからさらに状況がこじれてさらにおぞましい性的被害に発展します。

それで“ある大企業”の話に戻りますと、この会社では就活セクハラ対策として大きく3つの骨子の制度や施策を導入しています。

①就活生・求職者に対するセクハラは懲戒になりうる重大な服務違反であることを全従業員に伝える

②「夜間、一定の時刻以降の就活生とのコンタクト(食事などリアルな接触だけでなくLINE等を含め)を禁じる」など具体的な禁止行為のガイドラインを設ける

③上記の制度を就活生へのオリエンテーションでも明確に告知する

というのが目下の対応策です。

対策は妥当だが、それで十分なのか

就活セクハラは人事部の管轄下である公式な面接プロセスだけでなくOB訪問の下で(つまり人事部の目が届かないところでも)起きることが多いため、全社員に対して認識と具体的な指針を提示することが大切です。細かい点はいろいろと議論しましたが、彼の話については私もおおむね対策としては妥当だと思いました。

実はここからが本題です。プライベートな食事の場だったということで、普段、公式なコンサルティングの現場では私もいっさい口にしないようなもう一段階ディープな議論がその後、繰り広げられることになりました。それは、

「このような対策でも防ぎきれないセクハラ事案に会社はどう向き合うべきか」

という議論でした。

私は「経営コンサルタントで地下クイズ王」というほかにはない変わった肩書きを持っています。犯罪などのアンダーグラウンドなテーマについても、毎月、ロフトのようなイベントスペースでトーク会を開催している評論家です。後者の立ち位置で得た犯罪者についての知識をベースに考えた場合に、大企業の人事部が考えるような対策で十分なのかどうかが、この夜の後半の議論になりました。

次ページここからは就活セクハラから大きく離れた話題に
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