課題先進国日本の「人生100年時代の社会契約」 「やってみなはれ」精神で少子高齢化を考える
エステベス・アベ准教授によると、実は日本の高齢者の労働参加の割合は国際的に見てすでに高い。だが、硬直した雇用制度の下で長時間労働に依存するビジネスモデルで働く人々は、自分のスキルを向上するために教育に投資する余裕がない。
そのため10代では人的資源として非常に優れているが、中高年になると見劣りするのが日本人の実情だ。中高年の会社員などには、例えば先日辞任した桜田大臣のように、コンピューターを使いこなせない人も多い。そういう人が年功制の組織の外に出て大きな戦力になることは難しい。
いずれにせよ女性や高齢者の人的資源を活用、開発できるような柔軟な雇用制度に切り替えて、今後も成長が期待される分野に人的資源が移動しやすくすることは、避けられない課題なのだろう。
イノベーションが支える高齢化社会
平成の日本で、人口の高齢化が進むとともに、正規雇用に就く人々と非正規雇用に甘んじている人々の間の格差が拡大した現状を考えると、社会的安定の最後の砦である社会保障制度の重要性はますます大きい。
しかし同時にそれを持続させることはますます困難になっている。現代日本で指導的なマクロ経済学の専門家として知られる吉川洋教授は、増加する社会保障費は社会保険料で賄うことができず、足りない分が税金によって補われてきた実情を示しつつ、すでに公的債務がGDPの2倍以上になっている日本の財政は、消費税率を上げないでは維持できないと警告する。
確かに、日本人の長寿を支えてきた社会保障制度も、誰かが何らかの形でその費用を分担しなければ維持できるはずはない。
しかし増税は政治的に不人気だし、そもそも低成長下で非正規雇用に就いている若年層の税負担には限界があろう。そこでどうしても必要になるのは経済成長であり、そのための鍵はイノベーションである。
これまでの時代でも、経済成長の主要な原動力はイノベーションであり、人口動態ではなかった。イノベーションというと革命的な新技術を連想しがちだが、吉川教授が示したのは、子供用紙オムツから大人用のものへ生産をシフトさせた例である。
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