課題先進国日本の「人生100年時代の社会契約」 「やってみなはれ」精神で少子高齢化を考える
もっとも、少子高齢化は日本に限られた現象ではない。ヨーロッパの大陸諸国でも広く見られる傾向だし、また東アジアの日本周辺の諸国でもこれが急速に進んでいて、韓国や台湾では出生率は日本よりも一層低いくらいである。
こういった人口動態は、所得や教育水準が上がり、女性の社会進出が向上した結果生じているのであって、戦争や飢饉の結果ではない。ということは、世界が平和で繁栄し、女性の社会的地位が向上するという望ましい方向に事態が展開すればするほど、同様の人口動態上の変動が起こりそうである。
だとすれば、少子高齢化で世界の先頭を進む日本のあり方は、グローバルな意味があるのではないか。
そんな問題意識を背景に、サントリー文化財団創立40年シンポジウム「高齢化社会はチャンスになりうるか」が、去る5月17日に開催された。以下にそこでの議論の内容を、私なりにまとめてみよう。
柔軟な雇用制度に切り替える必要性
人口が減少に転じた平成の日本では、少子高齢化と低成長というよく知られている条件に加えて、サービス産業が重要性を増し、労働市場が正規雇用と非正規雇用に分断されて、格差が拡大した。
若年層の雇用条件が悪化したため、結婚を控える人々が増え、出生率が低下することになった。他方で女性が高等教育を受ける度合いは上昇しつづけた。長年英国『エコノミスト』誌の編集長を務めた国際ジャーナリストのビル・エモット氏は、基調講演で日本の条件をこのように総括した。
人口減少によって労働力が不足するのなら、これまで無駄にされてきた人的資源をより有効に使うのが当然の対策だろう。
これについては日本では女性という人的資源があまりにも無駄にされてきたことを、比較政治学を専門とするマルガリータ・エステベス・アベ准教授はエモット氏と口をそろえて強調する。しかし裏を返せば、その部分は日本にとって大きな伸びしろだということである。
他方で、高齢者人材についてはどうか。
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