クロスカンパニーの現地法人はいずれも人事の現地化ができている。女性の管理職も日本同様に50%いる。これまでの日系企業は女性の活用が苦手だった。当社は、大手の企業で成し遂げられなかった真のダイバーシティマネジメントの組織構造を、年商1000億円の段階で持っている会社だが、現地化しているうえに女性の登用を積極的にする日系企業はそうはない。加えて、全社員が正社員というのも、1000億円の売り上げ規模では珍しいだろう。
──快進撃の秘訣を自己診断してください。
大山康晴名人の座右の銘「静思万考」のうえで、「行動なくして効果なし」が、自分のポリシーだ。考えに考えたうえで、まずはやってみようと進めてきた。ポイントは、先見性の強い会社を作り上げることができたことだ。1999年にSPA(製造小売業)への転換に業界に先駆けて取り組んだ。セレクトショップ、昔の表現なら専門店だった会社が創業4年で従来のビジネスを全部捨て、フルモデルチェンジした。GAPを研究し尽くしての転換だったが、この一大変革が今生き残れている一番のポイントだったと思う。
その次に手掛けたのが販売チャネルの拡大。ファッションビルばかりでなく、JRの投資動向を見て、いち早く02年から駅ビル戦略という一大イノベーションを図った。05年ごろには駅ビルの一等地にほとんど出店できていた。その後、「街づくり3法」を契機とする郊外型ショッピングセンター投資という流れが来ると読んだ。それも08年ごろには出店が過熱し始め、競争相手も出始める。これらのチャネルイノベーションは業界から当初は失策といわれたが、2回にわたって先見性をもって手掛けられたのは大きかった。
──さらに、テレビCMを始めました。
駅ビルもショッピングセンターも飽和状態になってきて、10年にテレビCMを打つ決断をした。つまりプロモーションのイノベーションだ。これまでは女性誌にしか広告を打たないというのが業界の鉄則だった。あってもコモディティ的なユニクロやファミリーを意識したライトオンのCMだけ。このタイミングでSNSをクロスメディアにしてテレビCMに12億円投資した。他社にマスにCMしてどうするのだと言われ、独自調査でも成功の確率は5割とされたが、「負け戦」ではないことがわかったので、宮崎あおい出演のテレビCMを打った。そのCMで、既存店売り上げが前年比140%まで伸びた。1年目は競争相手もたまたまだろうと。しかし2年目も伸びが続く。
そうこうしている間に、日系のキャリアのアパレルが中国でぼろ負けしている現実を目の当たりにした。どこもが怖くて出られないという11年の環境だったが、日系のヤングアパレルがまだ出ていない。研究して、出ようと決断した。チャネルのイノベーション、プロモーションの新しい概念、中国進出の新しい概念を取り入れて、その先見性で会社は進化できたし、成長できた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら