30年前と同じ轍を踏む「地銀」が抱える構造問題 もはや持続可能なビジネスモデルではない

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地方銀行の場合、それが地元経済の低迷と重なってしまった。貸出量の伸び悩みと利ざやの悪化のダブルパンチを食らった格好である。貸出量の伸び悩みは、単に新規貸出が増えないという現象だけではなく、それでも、なんとか伸ばすために、貸出金利をほかの銀行よりも引き下げてほかの銀行の顧客を奪取するという「金利ダンピング」も助長した。

かつて実行した既存の長期貸出が満期の期日を迎えて、「折り返し」という更新のタイミングになるたびに、設定金利は引き下がる。低利振り替えと呼ばれる、貸し手が苦悩するプロセスである。

目先の利益確保に奔走

これによってストック資産の収益性は悪化し、かつ、ほかの銀行とのダンピング合戦で勝利したとしても、異様な薄利であるために、新規のキャッシュフローは先細りとなり、一挙に採算悪化のスパイラルが出来上がってしまった。

金融庁はマイナス金利政策の発動を想定していたわけでなくても、この収益性悪化のスパイラルは予想できていたに違いない。そこにマイナス金利が加わったのだから、いよいよ金融庁の「持続可能なビジネスモデルの構築」を求めるトーンは厳しさを増し続けた。

ところが、地方銀行の場合、持続可能なビジネスモデルの構築という長期的な取り組みに傾注するいとまはなかった。金融庁が打ち鳴らす警鐘に耳を傾けて実践していく余裕はなく、目先の利益の確保のほうが先決という、追い詰められた心境に陥ってしまったからである。

いきおい、本店を構える地元経済圏では、超薄利の利ざやで利益を稼ぐための貸出増強に向けた戦略が打ち出され、それがままならないなかでは投信、保険の販売手数料を積極的に積み上げるための過剰な営業目標が営業現場に課されるという状況が極まった。これは、本部が策定した半期(6カ月)の収益計画を前提において、その実現のために必要な貸出、投信、保険販売などの品目ごとの目標額である。

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