「世界の亀山」を追われた外国人3000人のその後

「月給70万円」では到底なかった現実

一方、それに見合った労働環境ではないことが指摘されている。厚生労働省によれば、2018年に労働災害で死傷した外国人は2847人にのぼり7年連続の増加で、過去最多を更新。このうち技能実習生が784人を占めていた。低賃金と劣悪な労働環境から「現代の奴隷制」と呼ばれる技能実習制度だが、「特定技能」制度は、その延長に設計されているとして批判が多い。

日本で暮らす外国人のリアルな姿と、それを取り巻くいろんな課題を見ていこう。

こんなに生活が苦しいと思わなかった

JR亀山駅からバスで15分。山道を揺られていくと、白亜の巨大建造物がそびえたつ。かつて「世界の亀山ブランド」として名を馳せたシャープ亀山工場(三重県亀山市)だ。

父親の写真を見せてくれた日系ボリビア人のシマヅさん。家では日本語で話していた(写真:週刊女性PRIME)

ここで働き「ものづくりの粋」の底辺を支えてきたのは、主に南米にルーツを持つ日系外国人たち。ボリビア出身のシマヅ・シズカさん(27)もその1人。県内で暮らす姉を頼って2015年、父親とともに来日した。脳梗塞を患い車いす生活となった父が「安全で豊かな祖国」で暮らせるよう、考えたうえでの選択だった。ところが――。

「こんなに生活が苦しいと思わなかった。(海外向けに放送されている)NHKにダマされた」

そう言って苦笑するシマヅさんは昨年9月、3年間働いてきたシャープ亀山工場で「雇い止め」を宣告された。4000人もの労働者が突如クビを切られ、このうちシマヅさんを含む約3000人の外国人が職を失った。彼らをシャープに送り込んでいた派遣会社は「製造拠点を海外へ移すので仕方がない」と話すだけ。たちまち生活は困窮し、住む家を失い、車で寝泊まりする人まで現れた。

今回の雇い止めにあった外国人労働者のうち、約40人が加入する労働組合『ユニオンみえ』の書記次長、神部紅さんはこう話す。

ユニオンみえの神部さん(写真:週刊女性PRIME)

「2018年7月に鈴鹿市で相談を受けたのが最初です。スーパーのフードコートに出向くとブラジルの方が大半で、ペルー、ボリビアなど20人ほどいました。内容は共通していて、シャープ亀山工場の雇い止めを通知されたと言う。大変な事態になると直感しました」

まだ共通点はある。同じ派遣会社に雇われていたのだ。神部さんが続ける。

「派遣元の『ヒューマン』という企業はシャープの5次下請け。便宜上、ヒューマングループと呼んでいるのですが、同じ住所、同じ代表者名で、三重県内にいくつもの会社を登記している。ペーパーカンパニーの疑いがあります」

次ページ短期間の契約で会社を変えて延々と繰り返されていた
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