テスラ株が突然「紙屑扱い」され始めた理由 アメリカのマーケットに異変が起きている

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一方で、リーマンショック後にQEで発生した膨大なマネーは、株式市場ではユニコーンと呼ばれる若いハイテク企業の上場を実現させた。債券に金利がなくなり、消費経済も頭打ちとなれば、マネーが向かう先は未来しかない。

金利のあったトリプルB格の債券に大量の資金が流れたように、利益の実体はなくとも、社会的に認知されたすばらしいアイデアには資金が向かった。逆に、本来そのような未来のビジネスの若い芽に長期投資してきたプライベートエクイティーでは、金余りの中で競争が激化し、今は彼らがトリプルBの社債を抱えている状態(前述のダニエラ・ブース氏)。その集大成として、直近では、リフト、ピンタレスト、ウーバーなどのユニコーンが次々に上場を果たした。

ところが、上場後の株価はどれも低迷している。筆者が見たところ、これは「ビジネスモデルのオーバーバリュエーション」というよりも、資本主義のサイクルとして、最後の局面に見られる「手じまい」の様相だ。

ハイテクブームに見られた「4つの波」とは?

日米で通算30年以上、株式市場を見てきた立場で言うと、ハイテクブームには4つの波があった(証券市場の波でハイテク産業の専門家の見地ではない)。

まず第1波はあのスティーブ・ジョブス氏が、これまで大会社に大規模なコンピュータが数台あれば事足りたテクノロジー産業を、「個人が1台のコンピューターを持つ時代が来る」と、まったく新しい概念で激変させた時期だ。平成の初期にあたる。結局は執行力に優れたビル・ゲイツ氏がそのブームの勝者となったが、1990年代の終わりには「ドットコム」ならなんでも買われる第2波が起きた(ドットコムバブル)。

さらに、2008年のリーマンショックを経て、第3の波は、モノを消費する経済から、ネットの無料サービスを広告料の収益で提供するビジネスモデルのグーグルやフェイスブックが躍進した時代。

そして、最後が、それでもあり余るマネーが、「シンギュラリティー」の先を語るユニコーンへ殺到した時代だ。この最後の波において、オバマ政権はウーバーへ補助金を出し、「P2Pビジネスモデル(消費者仲間でつながること)」の温床となった。

オバマ政権を支えたミレニアル世代は、親のブーマー世代と比べお金に余裕がなかった。彼らは無料アプリの競争を生み、タクシーやホテルの代わりにウーバーやエアビーアンドビーを育てた。そしてここでは「ペイパルマフィア」と呼ばれる人たちの存在も重要だった。

ペイパルマフィアとは、決済会社のペイパルを成功させた人たちのことで、テスラのイーロン・マスク氏やフェイスブックへの最初の投資家でトランプ大統領を支持したピーター・ティール氏を先頭に、2人の下にいた若者たちが、後にユーチューブやリンクトインを生み出した現象を言う。

証券マンの目で見て、ペイパルマフィアがジョブス氏やゲイツ氏と違ったのは、彼らは最初から株式市場を使った資金調達(レバレッジ)を次の成長や投資に使うスキームを持っていたことだった。その点では、彼らのモデルの先行者はソフトバンクの孫正義社長ではないだろうか。

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