テスラ株が突然「紙屑扱い」され始めた理由 アメリカのマーケットに異変が起きている

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つまり、成長するにはそれ以上の借金をすることが当たり前になっている。この状態を、健全な資本主義というにはもはや無理があるが、だからこそ、結果として分配で不満がたまった人たちを中心に、MMT(現代貨幣理論)が持ち出されている。

パウエル議長の豹変の真因は「債券市場の脆弱性」

その中で懸念されるのが、4兆ドル規模といわれるトリプルB格付けの社債の存在だ。昨今、日本の地銀が資産担保証券を大量に買っているという話が盛んだが、FEDの懸念はそこではない。FEDは、いくらマネーをジャブジャブにしても、いざというとき、市場から流動性がなくなることを恐れている。

昨年10月末、大手格付け機関のムーディーズは、GE(ジェネラル・エレクトリック)の長期の社債をA2からBBBへ格下げした。するとジャンク市場の流動性が40日にわたって完全に消えてしまった。

それこそ「リーマンショック級」に発展するかもしれない出来事だった。このとき、先に下がり始めた株に対し、比較的堅調だったクレジット市場が一気に悪化した。こうなると、実体経済と株式市場の頭と尻尾が逆転し、株価だけ支えていれば大丈夫というFEDの法則も危うくなる。

例えば、前述のように、米中貿易協議の結果、株価は上下運動を繰り返したとしても、着実に実体経済の方向性は悪化している。リーマンショックの反省から、格付け会社は厳粛に対応するようになっているが、そんな中、FEDのゼロ金利時代に大量に社債を発行し、それらを買い入れ消却などに使ってきた会社の債務が借り換え時期を迎えると、はたしてどうなるか。金利は上がっている。そこに収益はあるのか。

以前より、JPモルガン会長のジェームズ・ダイモン氏は、リーマンショック後に施行された厳格な「ボルカールール」は、アメリカの銀行が債券市場のバッファー(受け手)となる機能を奪い、やがてそれは次のシステム危機を呼ぶ可能性があると警告してきた。FEDはGEの格下げによって、その一端を垣間見たのだろう。パウエル議長のピボットは、株価下落の影響もあるが、本質は彼がずっと恐れていた債券市場の脆弱性である。

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