崖っ縁のソニー 《現役社員&OB座談会》研究者が社内で営業活動、目利きが経営層にいない
【参加者】
Aさん-技術系現役社員
Bさん-事務系現役社員
Cさん-技術系OB
Dさん-企画系OB
ソニーの危機を現役の社員やOBはどうとらえているのか。率直な気持ちを聞いた。
--リストラが始動します。社内ではどんな変化が起こっていますか。
Aさん 昨年10月の業績下方修正と同時に、デイリーに発生する固定費5%削減の号令がかかった。特に海外出張の承認が厳しくなった。4月には派遣社員の契約打ち切りも始まるようだ。
Bさん 他人事ではない。世界1万6000人のリストラのうち、ソニー本体の正社員の削減枠は約1000人と聞いている。
Aさん 赤字のテレビ事業本部には12月、リストラ対象者に転職を促すキャリアプラン推進部ができた。早期希望退職の募集が始まるのもそろそろだ。
Bさん 2007年度下期からバブル期の再来のようにイケイケドンドンの拡大路線だったからショックが大きい。各製品部門が採用を急拡大させ、エレクトロニクス関連の採用グループはこの1年で9つに倍増したぐらいだ。強気だった夏までに採用した人が、リストラ発表後の12月にもまだ入社してきているというのは皮肉だ。
Aさん 研究畑の社員が悲惨だ。経営層から研究部門も利益を生めと尻をたたかれ、「この研究成果を事業にしてくれませんか」と事業部門に研究者が営業活動をして歩いている。でも事業部門は足元のビジネスで手いっぱいだから、ろくに話も聞いてもらえないと嘆いている。
Cさん 利益第一になっているのは外部から見てもわかる。転職先のソフト会社でもソニーのエンジニアと商談する機会が多いが、最近は口を開けば「そのソフトでいくらコスト低減できますか」という話ばかり。パナソニックのエンジニアのほうが、新技術に先行投資し製品の付加価値を高めることに意識が高い。OBとしては残念だ。
--リストラや生産再編を成し遂げれば必ず浮上できるという希望はありますか。
Aさん 正直、希望を感じるとは言いにくい。中鉢社長をはじめ、経営層が言うことは危機状況の分析ばかり。分析は社外のコンサルタントでもできる。トップに示してほしいのは、危機を乗り越えた後、ソニーが一体どんな企業になっているかだ。価値を生めと上から迫られる社員としては逆に、「会長、社長、あなたがソニーにもたらす付加価値って何ですか」と聞きたい。
Bさん 何が技術や製品として花開くか先見できる目利きがマネジメントクラスに見当たらない。ソフト産業出身のストリンガー会長や記録メディア畑の中鉢社長にコンシューマー機器の完成品を判断しろというのは無理なのだろうか。
Dさん 今の経営陣は、まだ市場に存在しない製品や主流でない技術に賭けるということをしない。4代目社長の岩間和夫さんが、技術評価の定まらないCCD(撮像素子半導体)を何年もかけて育てたような長期的な取り組みがなくなった。
Cさん 逆に僕が辞める頃には上が「今のデファクトスタンダードはアップルのiPodだ。どうしてアップルに頭を下げてiTunesを使わせてもらわないんだ」と言うようになっていた。ただ、岩間さんの時代とは技術や競争の環境が違う。かつてのように新しい市場で成長する道ではなく、生産や開発の現場を効率化して利益を生む道を選択したのも仕方がない。
--その点ではパナソニックやサムスン電子に水をあけられている?
Aさん パナソニックの製品を分解すると、現状では負けを認めざるをえない。驚くほど低コストの汎用部品を使って、ソニー以上の性能と品質を実現している。
Dさん 過去2回のリストラで退職金+年収3年分の積み増し金を手に去った人が、転職先の国内外競合メーカーにソニーのノウハウを移転させている。
Bさん 今度のリストラが終われば、優秀な人材は誰も残っていないかもしれない。ソニーに残ると決めた以上、一社員としても危機感を持って頑張るしかない。
(週刊東洋経済)
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