定年後が忙しい、84歳のとにかく柔らかい発想 "現役プログラマー"の世界の広げ方

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更別を案内してくださっていた方が、連れていってくださったのが、「紫竹ガーデン」のレストランでした。紫竹ガーデンは紫竹昭葉さんが、60歳を過ぎてから耕作放棄地を利用して作った1万5000坪の広大なお花畑です。その一角にあるレストランでは、まさに「お花畑で朝食を食べる」という体験ができるのです。

「1日中、お花と遊んでいたい」。そんな思いで紫竹さんが手をかけ続けたお花畑は、いつしか約2500種もの花が季節ごとに咲く大人気のガーデンになりました。今や年間10万人以上のお客さまが訪れるのだとか。お花が好きだという気持ちが、町の活性化につながったというすばらしいケースです。

紫竹さんは1927年生まれ。今でもお元気で、レストランに顔を出されていました。お花のついたお帽子に花柄プリントのブラウスをお召しになって、とってもおしゃれなんです。90歳を過ぎても好奇心旺盛で、私の作ったアプリ「hinadan」を紹介したらその場で遊んでくださったんですよ。

「子ども食堂」のお手伝いも素敵

こんなに大規模な取り組みでなくても、地域に貢献することはできます。例えば、「子ども食堂」のお手伝いをすること。子ども食堂は、地域住民や自治体が主体となって、子どもたちに食事を提供するコミュニティーの場です。今は全国に2300カ所ほどありどんどん増えています。朝ごはんや晩ごはんを当たり前に食べることができない子どもたちに、無料または数百円で食事を出しているのです。これも、地域密着の活動です。

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探してみると、退職後の活動の場はいろいろ見つかると思います。最初のきっかけは「近所に拠点があったから」「町内会長さんに誘われたから」といったことでもいい。やっているうちに「もっとITのことが知りたい」「子どもの貧困問題を解決したい」と、やりたいことが生まれてくるかもしれません。

そうしたら、改めて勉強するのです。高校や大学でやらされていた頃の勉強とは違い、自分の興味から学ぶこと。それは本物の「独学」になりえます。学ぶということは、机に向かっていなくてもできます。こういう活動の中からでしか学べないこともたくさんあります。地域のこと、イマドキの若者、子どもたちを知る機会になりますね。

若宮 正子 世界最高齢プログラマー

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わかみや まさこ / Masako Wakamiya

1935年東京生まれ。東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)へ勤務。定年をきっかけに、パソコンを独自に習得し、同居する母親の介護をしながらパソコンを使って世界を広げていく。1999年にシニア世代のサイト「メロウ倶楽部」の創設に参画し、現在も副会長を務めているほか、NPO法人ブロードバンドスクール協会の理事として、シニア世代へのデジタル機器普及活動に尽力している。2016年秋からiPhoneアプリの開発をはじめ、2017年6月にはアメリカ・アップルによる世界開発者会議「WWDC2017」に特別招待される。安倍政権の看板政策「人づくり革命」の具体策を検討する「人生100年時代構想会議」の最年長有識者メンバーにも選ばれた。エクセル・アート創始者。

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