KDDIの新料金「最大4割値下げ」に透ける思惑 「家族3人以上」で値下げ幅が最大の理由とは

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今月10日に成立した改正電気通信事業法によって、通信契約への加入を条件に端末代を割り引く「セット販売」が今秋から禁止される。これまでキャリア各社は、iPhoneなど10万円前後の高額な端末を、自社が注力する通信プランへの2年契約の加入を条件にして、大幅に割り引いて売ってきた。

このやり方ならば、端末代を「実質0円」まで値引いても、通信契約が続く2年間に毎月入ってくる通信料金でペイできる。キャリアはこのセット販売を駆使することによってMNP(他社からの乗り換え)を検討している人たちに大きな端末値引きを用意することで、利用者の奪い合いをしてきた。

キャリア間の乗り換えが鈍くなる可能性も

だが、セット販売の禁止以降は、通信料金を原資にした大幅な端末値引きは難しくなる。そうなれば利用者の端末購入時の負担は大きくなり、買い替えサイクルは長くなる。MNP客への手厚い端末値引きも難しくなるため、ある携帯販売代理店関係者は「今後は今までと比べてMNPが減る可能性もあるのではないか」と話す。

つまりこの秋に「セット割引禁止」のシャッターが降りた後は、キャリア間での利用者の行き来が減ることも考えられる。10月には楽天も携帯通信事業に本格参入する。その前に少しでもテリトリーを広げ、さらに他社に流出しないように囲い込んでおきたい、というのが、家族割引を組み込んだ本音なのだろう。

ソフトバンクの宮内謙社長は5月8日の決算会見で、他社の値下げ対抗について「微修正で対応できる」と述べており、今のところ料金プランの大きな見直しはなさそうだ。主力の大容量プランのウルトラギガモンスター+(プラス)は、すでに家族割引の適用が大きい設計にしている。

菅官房長官の思惑通り、キャリア各社は値下げに踏み切ってきたが、囲い込みが一層強まるプランが投入された。電気通信事業法の改正で端末買い替えサイクルが長くなることと併せて利用者のキャリア間の移動が鈍くなれば、長い目で見た競争の活性化にはマイナスの面になるかもしれない。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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