乱射事件が起きた学校を襲う「聖地巡礼」の恐怖 20年目の節目を迎えたコロンバインの今

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ジェファーソン郡を含むデンバー大都市圏の各所で、今回の事態を子どもたちにどう説明するか、親たちは言葉を探しあぐねていた(もっとも子どもたちは学校封鎖にも銃を持つ不審者の襲撃に備えた訓練にも慣れていたが)。コロンバイン高校では生徒たちが追悼式の準備をしていたが、学区からの緊急連絡やニュース速報が携帯電話に配信され、不安が高まる中で準備どころの騒ぎではなくなっていた。

「今週、私たちは愛とやり直すことについてメッセージを伝えるはずだった」と、コロンバイン高校3年のレイチェル・ヒル(17歳)は語った。「なのに今、コロンバインを覆っているのは恐怖のニュースばかりだ」。

追悼の日が新たなトラウマの種に

学校封鎖を受けて、子どもたちに家の近くで遊ぶように言ったという親たちもいれば、たった1人のティーンエイジャーからの脅迫で何十万人もの子どもたちが学校に行けず、大都市圏全体がパニックに陥ったことにやりきれない思いを抱く親たちもいた。

癒やしのための1日となるはずだった20日は、この1件のせいで新たなトラウマの原因になってしまったと、イェシバ大学(ニューヨーク州)のウラニア・グラスマン教授は言う。

「(追悼の)行進に手榴弾を投げたい、そして人々に再び害をなしたいと思っている人間がいる。その事実は事件に居合わせて生き延びた人々や家族、地域社会に新たなトラウマを与える」とグラスマンは述べた。

研究者や教育関係者によれば、20年後の今も、コロンバイン高校銃乱射事件とその実行犯たちは一種のシンボルとなって、全アメリカの若者たちに影響を与え続けている。

捜査関係者によればパイスはマイアミビーチ高校の生徒で、コロンバインの事件に「心を奪われていた」。そしてSNSに危険行動を匂わす投稿をしたり、友人や家族の前で不吉な発言をしたりしていたという。

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