筆者の目にまず飛び込んできたのは、留置線でひと休み中の227系。この3月から運用を開始したばかりで、これによって同所に所属する117系は定期運用から引退した。
その手前、検修庫の中に105系の姿があった。新在家派出所に所属する車両は大半が103系からの改造車で、側面に客扉が4つ並ぶ。JR西日本に残る103系は、全車で戸袋窓の埋め込み工事が施工されているが、105系はオリジナルのまま。トイレや機器室を設置するために車端部の窓が埋められていたり、ワンマン運転に対応するための車外放送用スピーカーなどが取り付けられていたりするものの、103系よりも105系の方が“103系らしい側面”を保っているのだ。
車内に入ると、そこにも懐かしい空気が漂っていた。ロングシートは下部まで金属パネルで覆われており、端部の仕切りはパイプ製。田の字形の窓は開閉可能で、その上の荷棚は文字通りの“網棚”である。
そして、天井には扇風機が。いずれも、最新の車両では見られないものばかりだ。105系はもともとクーラーを積んでおらず、後から改造で取り付けられたが、そうした機器類や風道、あるいは後年取り付けられた保安装置などが、客室内に出っ張っている。こうした雑多で質素な印象が、これまた昭和に生まれた103系の雰囲気を色濃く残している。
運転台はアナログ感が満載
客室の壁はリニューアルによってブラウン系に変わっていたが、乗務員室は昔と同じく薄緑色。運転台の正面には6つのメーターが並び、その手前にあるブレーキハンドルは木製だ。
スイッチ類はすべて、物理的に押したり上げ下げするタイプで、最新車両に見られるようなデジタルメーターやタッチパネルは見られない。もともと広くない空間に、さまざまな機器が追加されたため、まさに“スイッチだらけ”といった印象だ。
「105系は、最新の車両と違ってスイッチ類や接触箇所が多いから、メンテナンスに手間がかかる。でも、手をかけてやればちゃんと動いてくれる。手のかかる子供ですけど、かわいいもんです」と、案内してくれた検修担当の社員が笑顔で言った。こうした人達が昼夜を問わず面倒を見ているからこそ、“子供”たちはここまで活躍できたのだろう。
取材を終えて車両から降りたとき、和歌山駅で乗客を乗せた105系がちょうど横を走っていった。王寺方の先頭車は、常磐線時代の雰囲気を残す車両だ。最近は、首都圏から訪れる鉄道ファンも多いという。故郷から500km以上離れた地まで会いに来てくれる人がいる……彼ら105系もきっと、幸せに違いない。引退するまで、あと4カ月余り。最後まで安全に走り抜いてくれることを願う。
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