人間中心のデンマーク流イノベーションとは? 格差助長の「シリコンバレーモデル」は限界だ

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デンマーク・デザイン・センターCEOのクリスチャン・ベイソン氏(撮影:今井康一)
家具や照明などのプロダクトデザインで知られるデンマーク。昨今はそれだけでなく「社会やビジネスの仕組み」をデザインする取り組みが盛んに行われている。その旗振り役が、国のデザイン機関であるデンマーク・デザイン・センター(DDC)。
このほどDDCのクリスチャン・ベイソンCEOが来日したのを機に、ベイソン氏から次世代のイノベーションの取り組みや日本でイノベーションが起こりづらい背景などについて聞いた。聞き手は、ベイソン氏と親交の深い多摩大学大学院教授の紺野登氏。

紺野登氏(以下、紺野):デンマークと日本の友好関係の中で、イノベーションを介した交流があると思います。両国のつながりについてはどう考えていますか。

クリスチャン・ベイソン氏(以下、ベイソン):日本とデンマークの友好関係は、国交樹立後、一昨年で150年が経ちました。日本は民主的で経済は発展し、流通やデジタル分野など高度な技術を持ち、あらゆる面ですばらしいものがあります。両国は国の大きさなど、違うところがいろいろとありますが、今後さらに連携して取り組まなければならない課題があると思っています。

紺野:今、イノベーションというと、日本人はまずシリコンバレーを思い浮かべますが、私はデンマークを含む北欧も重要なイノベーション地域だと理解しています。イノベーション地域としての北欧とシリコンバレーの違い、その中でのデンマークの位置づけについて聞かせてください。

シリコンバレーモデルは社会や人に格差をもたらした

ベイソン:私の父はアメリカ人で、私自身アメリカで暮らしたこともあります。アメリカとデンマークの国籍を持っている立場からお話しすると、シリコンバレーのイノベーションモデルと、北欧型のイノベーションモデルの間には、ますます開きが生まれてきていると思います。

デンマークの場合、国独自のイノベーションが発達していて、シリコンバレーモデルの代替モデルになると考えています。シリコンバレーモデルは確かに人々の暮らしにさまざまな便益をもたらしてきました。しかしその一方で、よい社会を作ることに必ずしも貢献しているとは言えないほど、社会や人に大きな格差をもたらしています。

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