人間中心のデンマーク流イノベーションとは? 格差助長の「シリコンバレーモデル」は限界だ

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ベイソン:これからますますデジタル化が進んでいきますから、先ほどお話にありました「人間的であること」「社会のために」「持続可能な」という部分を、政府や民間企業がいかにアシストしていけるのか。これは決して簡単なことではありませんが、必ずやらなくてはいけない。

そのためには次の3つのことを強調しておきたいと思っています。まずは「実行すること」。つまり、できるだけ多くの企業の方々に参加してもらい、資金面の支援だけでなく、どのようにすればイノベーションがよりスムーズに進められるのか。この実験によって、2つ目の「学習」が可能になります。

そして、3つ目が、学習した内容を「シェア」するということ。実際、人間を中心としたイノベーションはまだまだ途上にあるため、こうした実験によってさまざまな価値のあるものが生まれてくると思います。

行き詰まっているのは日本企業だけではない

ベイソン:最後に、私たちが行ってきた挑戦についてお話ししましょう。

デンマークではかつて、政府レベルで十分な野心が欠けていました。わが国は小さな国ですが、もっとイノベーションに対して貢献できたはずだと反省しています。それから、国内には小さな機関が数多くあって、焦点が絞り切れていませんでした。デンマーク政府もこれらの機関を集約していこうと努力はしていますが、日本同様、縦割り主義で、なかなか連携がうまくいっていないのが現状です。

私自身、かなりの時間をさいてこの辺りの問題意識を関係者に提起しています。いわゆる官僚主義は避けなければいけないというのが結論なんです。

日本企業が行き詰まっていると言われていますが、これは必ずしも日本だけの問題ではありません。世界中の大企業が同じようなジレンマや閉塞感に悩まされています。

こうした現状を少しずつ打開していくには、まず「フラット」な階層組織でなければならない。それから、オープンコミュニケーションも重要ですし、協働を進めていくことも重要です。そのためのスキルや社員の多様性も無視してはいけないと思っています。

大企業は、スタートアップ企業ともっとオープンにパートナーシップを進めていくべきではないでしょうか。残念ながら、とくにこの面では日本企業の評価は決して高くありません。しかし日本企業にしても、デンマーク企業にしても絶対に解決できると考えています。こうしたことを意識しながら、一歩一歩努力していくことが重要です。

「それには「共通善」に基づくリーダーシップがないと有効な組織を作ることはできない」というのは紺野先生の持論ですが、私も本当に同感です。そうしたリーダーシップを通じて協同やエンゲージメント(個人と組織が一体で成長に貢献する)を進めていくこと。もう1つが内向きの視点ではなく、お客様、マーケットの利益を第一に考えることが、イノベーションで最も重要だと考えています。

紺野:大変示唆に富むお話をありがとうございました。

伊藤 洋次 ジャーナリスト、編集者

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いとう ようじ / Yoji Ito

立教大学卒業。複数の出版社に勤務。雑誌、書籍の編集などを経て現職。Webサービスの企画、開発なども行っている。

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