富士フイルム、「写真銀行」でグーグル超えるか 画像データで料理や旅行、趣味も分析可能に

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フォトバンクで使うAIも、まずは保存された写真を効率よく整理するために使用する。AIが人物や場面ごとに「誕生日」や「旅行」など、キーワードごとに分類。ピンボケなどのミスショットや同じ場面構成の複数枚の写真をAIが判別し、残したい写真だけが残るようにサポートする。

また、サービスはまず日本国内向けに限定する。というのも、七五三や初詣、花見など、日本独特の文化を分類できるようにするためだ。「グーグルなど世界各地の画像を同時に解析しているタイプのAIでは、現地の細かい文化まで分類するのは難しい」(松崎氏)という。日本人のライフステージに合わせて写真を整理するツールになることを目指している。

写真事業とのシナジー効果も見込める

富士フイルム社内では、これまでの写真事業との相乗効果を期待する声もある。同社はデジタル化の進展に合わせ、アナログのフィルム写真のデジタル化を代行するサービスを行っている。フィルムや現像された写真、アルバムを預けると、それらをデジタル化したデータをDVD-ROMとして送り届けている。

写真のデジタル化サービスの売上高(数字は非開示)は直近3年間で毎年前年比10~20%増で成長しており、同社は「過去の写真をしっかり整理したいというニーズがある」とみている。現行ではDVD-ROMにデータを保管して依頼者に届けているが、いずれはスマホなどに直接データ送信することも視野に入れている。

スマホにデジタル化された写真データを送り、フォトバンクのAIによって自動で整理できれば、ユーザーの負担も軽くできる。なおかつ、デジタルカメラが普及する以前の写真情報も取り込むことで、ユーザーのより長期間のデータを解析できることとなり、各個人の嗜好をより正しく理解することにつながりそうだ。

富士フイルムはこれら写真のデジタル化需要を取り込みつつ、各ユーザーと提携企業の商品やサービスのマッチングを行って提携企業から手数料収入を得ていきたい考えだ。枚数や撮影された時期、場面が多ければ多いだけ各ユーザーの嗜好を細かく分析できる。マーケットプレイスが活性化するかは各ユーザーが写真をどれだけ保存するかにかかっていると考えられ、その点で、各ユーザーの写真は情報の「資産」といえる。

将来、情報銀行のような機能を持つ可能性について、松崎氏は「頭の体操としてはありうる」と話す。写真を通した新しい経済圏ができ、個人が自分たちの写真データを企業のマーケティング向けに売るような時代も遠くないのかもしれない。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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