子どもを「勉強好き」に育てるとっておきの秘訣 「子は親の背を見て育つ」は科学的にも明らか

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恭介くんがなぜ、みちるさんの趣味に興味を持ったのか? その理由を証明する実験がMTI(マサチューセッツ工科大学)で行われていました。

親がおもちゃを取り出すのに30秒かける様子を2回(計60秒)見せたAグループ。10秒しかかからない様子を6回(計60秒)見せたBグループと2つに分け、赤ちゃんに頑張って押すと音が出るおもちゃを渡しました。

すると、Aグループの赤ちゃんのほうが音を出す回数が2倍多かったというものです。

子どもは基本的に親の言うことを聞かないもの。しかし、親の言葉には耳を貸さなくても、親の行動は無意識にまねしてしまうことがMITの実験で証明されたのです。

脳科学では、脳と脳が向き合った場合、互いの脳は同じような活動をしたがるということがわかっています。例えば、あなたの目の前の相手が手を回します。

そのとき、相手の脳では、手を回すのに必要な脳の部位、前運動野(ぜんうんどうや)や運動野などの運動関連領域が働きだします。

そして、相手が手を回しているのを見ているだけで、あなたの脳でも自分が手を回しているときと同じようなニューロン(脳細胞)活動が出てくるのです。このような脳のメカニズムを「ミラーニューロン」とか「ミラーシステム」と言います。ミラーとは鏡。つまり、目の前にいる人の動作や意図、感情までも映しとる脳細胞があるのです。

グルメ番組を見て食べたくなった経験は?

グルメ番組でおいしそうにラーメンを食べている場面を見て自分も無性にラーメンが食べたくなったり、人が痛い思いをしているのを見て自分も痛いような気がしたり、まるで自分も同じことをしているように感じるのはミラーニューロンの働きによるものです。

このミラーニューロンのおかげで、「見て覚える」ことができます。同時に私たちの動作や心映えが子どもに「見られ」、子どもの脳も同じように活動しがちなのです。

MITの研究結果からもわかるように、親の頑張る姿が子どもに影響を与えるのはミラーニューロンの働きによるものです。逆に、子どもが足でドアを開ける姿を見て「お行儀が悪いでしょ」と注意したら、「お母さんだってやってるじゃん」と返されて絶句する。よくありそうなシーンです。

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ミラーニューロンの「まねるパワー」は侮れません。一緒に暮らしている親子は共に過ごす時間が長い分、ミラーニューロンの影響力も大きくなります。「親の背を見て子は育つ」ということわざを脳科学的に表現すれば、子どもはミラーニューロンをとおして親の姿をまねしているのです。

例えば子どもが朝型で、早朝に勉強したほうが頭に入りそうだと思ったら、まずは親が早起きして自分のために時間をつくる姿を見せましょう。「あなたも早起きして勉強してみたら?」なんて言葉は余計です。親が最初に行動して、後は子どものミラーニューロンに任せるだけです。

(漫画・松浦はこ)

篠原 菊紀 脳科学者・公立諏訪理科大学教授

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しのはら きくのり / Kikunori Shinohara

1960年、長野県茅野市出身。東京大学教育学部卒業後、同大学院教育学研究科修了。学習時・運動時・遊興時・CM視聴時など、日常のさまざまな場面での脳活動を調べるかたわら、テレビやラジオなどで実験や解説を行っている。地元の「茅野市縄文ふるさと大使」も務める。

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