月額3000円の「飲み放題コーヒー」が儲かるわけ 「外食サブスクモデル」に可能性はあるか

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「月に22回も利用してもらえる飲食店はほかにないだろう。顧客の囲い込みができている」と高梨社長は胸を張る。現在は直営で3店舗のみだが、「フランチャイズ展開をしたい、との問い合わせも多い」(同)と明かす。

飲食店のサブスクサービスは、ラーメンチェーンにもある。1都3県に16店を運営する「野郎ラーメン」だ。2017年11月に開始したサービスは専用アプリで登録し、月額8600円(税抜き)を支払う。アプリ上の「パスポート」を提示すると、1日1回「豚骨野郎」(税込み780円)、「汁無し野郎」(同830円)、「味噌野郎」(同880円)の3種類のどれかを食べることができる。

新橋の店舗は昼時になると、サラリーマンでごった返す(記者撮影)

利用者は、近隣のオフィスで勤務するビジネスパーソンや学生が多い。平均で月に17~18杯を食べるといい、「損益としては正直厳しい」(野郎ラーメンを運営するフードリヴァンプ社の黒木勝巳氏)。月に11~12杯を食べないと元を取れないため、継続率もさほど高くないようだ。

ただ、収益確保というよりも常連客へのサービス拡充の側面が強い。期待どおり、常連客とのコミュニケーションが増え、「会員は券売機を使用せずに、スタッフにアプリを提示して商品を注文する。『常連客』だとすぐにわかり、声を掛けやすくなった」(黒木氏)。同社は今後もこのサービスを継続する考えだ。

利益は出ないが、PR効果は大きい

野郎ラーメンのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での露出が増加する効果もあった。SNSで1カ月間ラーメンを食べ続ける様子をアップする会員が少なくない。テレビニュースでも頻繁に取り上げられ、広告費をかけずにサービスの知名度を上げることができた。サブスクの仕組み自体では利益を出せていないが、全体的にはPR効果が大きいようだ。

飲食店でも広がりつつあるサブスクサービス。飲食店のビジネスは注文があった商品を販売する単純な収益モデルに限られていたが、月額制が定着するとサービスの多様化につながる。購買方法の選択肢が増えるのは、消費者にとって悪くないことだろう。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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