寺田心くん「ブックオフ店員」CMが好感のワケ

アマゾンCMは有名タレントを起用せず人気に

このCMにも有名タレントは出演していないが、「商品が早く届く」というサービスが生活にどのような幸せをもたらすのかを、企業からの押しつけではなく生活者の視点で表現されている。今作でも豊富な品ぞろえが、日々のささやかな幸せや穏やかな生活を支えるということを、過度な演出や説明を控えたクリエイティブさで描き、多くの視聴者の共感を集めた。

Amazon AtoZ ブランケット篇 A(Amazon Japan Officialより)

先月の記事『木村拓哉の「金麦CM」が示すタレント起用の深み』では、『金麦』のメッセンジャーに木村拓哉が加わったことや、『カローラ スポーツ』の菅田将暉と中条あやみ、『いち髪』の川口春奈を事例に、人気タレントの持つハイコンテクストな記号性について紹介したが、このアマゾンジャパンのCMでは、生活者の視点で描くことが共感ポイントであるため、何かしらのイメージを与えてしまう有名タレントの出演は逆効果になる可能性が高い。

もちろん前述のタレント起用事例は、その人特有のイメージがブランドとうまく重なり、企業メッセージの伝達効率を上げることに成功している。だが、世の中に数多くあるCMの中にはタレントや派手な演出ばかりに注目が集まり、肝心の商品・サービスについては記憶に残らないものも少なくない。

アマゾンジャパンのCMはなぜ支持されるのか

多くの情報が消費者を取り巻く環境において、自社のCMを目立たせようとさまざまな策を講じるうちに、いかに新奇性に富んだアプローチであるか、視聴者を驚かせる手法であるかが重要視されることも多いのではないだろうか。表現上のテクニックはもちろん大切であり、各社のアイデア勝負ともいえるCMは見ていて純粋に楽しいものだ。ただ、情感豊かな物語が組み込まれた優れたクリエイティブであれば、派手な演出がなくてもきちんと心に届くということを、こうしたCMが思い出させてくれる。

セリフや説明がないと、視聴者に理解されるのか不安になる広告主もいるだろう。基幹商品や社運を賭けた新商品であればなおさら、開発担当やマーケティング部門から「もっと商品の魅力をしっかり伝えてほしい」と要望を出される宣伝担当者も多いと聞く。

大きな予算をかけて広告活動をする以上、それは当然のことだ。そうした中でCM表現の違いを生むのは、競合環境や自社商品のフェーズといった要因だけではなく、企業から視聴者に対する信頼感ではないだろうか。アマゾンジャパンは視聴者の感受性や読解力を信頼することを前提にCMを企画・制作しているように感じる。

「言葉がなくても感じとってくれるはず。頭ではなく心で受け止めてくれるはず」そういった相手への信頼や敬意は恐らく視聴者にも伝わっている。広告は“コミュニケーション活動”といわれる。優れたコミュニケーションとは相手を信じる礼儀正しさから生まれるという基本は業界や規模にかかわらず、不変のようだ。

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