なぜ人は「スジの悪い戦略」に振り回されるのか

上司の思いつきが失敗するのにはワケがある

「戦略」と銘打っているだけで、中身のない目標になっていませんか?(写真:Fast&Slow/PIXTA)
上司が思いついた「スジの悪い戦略」に振り回されるビジネスパーソンは少なくないのではないだろうか?
マーケティング戦略コンサルタントであり、『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』の著者でもある永井孝尚氏によると、「スジの悪い戦略にも、スジが良い戦略にも、パターンがある」という。そこでスジが悪い戦略が持つ4つの特徴について語ってもらった。(本記事は、同書の一部を再編集したものです)

スジの悪い戦略を思いつく社長に振り回される

「ウチの社長、思いつきでいろいろなこと言ってくるんです。でもいつもスジが悪くて、振り回されるわりに、ほとんど失敗するんですよね」

先日、あるマネジャーからこんな悩み相談を受けた。話を聞くと、この社長はつねに「スジが悪い戦略」を考えているようだ。

よく「この戦略は、スジがいい」「この戦略は、スジが悪い」と言われる。この違いを明確に教えてくれるのが、拙著でも取り上げたリチャード・ルメルトの名著『良い戦略、悪い戦略』だ。本書は両者の違いを、「良い戦略」と「悪い戦略」に分けて明快に教えてくれる。

ルメルトは戦略論と経営理論の世界的権威だが、著書は少なく、日本では知名度が低い。2011年出版の本書『良い戦略、悪い戦略』も、30年ぶりに書いた2冊目。しかしエコノミスト誌は彼を「マネジメントコンセプトと企業プラクティスに対し最も影響力ある25名」に選んでいる。

さて、この社長に限らず私たちも、「悪い戦略」を立ててしまうことが少なくない。そこでまず「良い戦略」とはどのようなものかを考えてみよう。

「良い戦略」とは、単純明快だ。1805年、ナポレオンがイギリス侵攻を狙っていた。イギリスの英仏海峡の制海権をめぐり、トラファルガー岬で33隻のフランス・スペイン連合艦隊と27隻のイギリス海軍が戦った。

当時の艦隊決戦の定石は、両軍が艦砲射撃でダメージを与え、接近戦で戦う方法。しかしイギリス海軍のネルソン提督は常識を覆し、敵の真横に英国艦隊を突っ込ませた。損失は敵艦隊22隻、イギリスは0隻。イギリスは危機を脱した。

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