なぜ人は「スジの悪い戦略」に振り回されるのか 上司の思いつきが失敗するのにはワケがある
そもそも戦略とは仮説である。優れた科学者は、知識をしっかり押さえたうえで、その先にある未知の世界を解き明かすために仮説を立てて、その仮説が正しいかを実験する。
ビジネスも同じだ。良い戦略とは「こうすればうまくいくはず」という仮説なのだ。未知の世界に踏み込むため、知っていることを基に仮説を作り実際に試して検証する。
スターバックスは、シュルツがミラノでエスプレッソバーの感動体験をしたことが出発点だった。
「このエスプレッソ体験は、薄くまずいコーヒーを飲むアメリカ人に人気になるはず」と仮説を立て、アメリカで小さなエスプレッソバーを開店し、顧客の反応を観察しながらアメリカ人の好みに合わせて進化させたのがスターバックスの始まりである。
戦略思考に役立つ3つのテクニック
このように「仮説 → データ → 新たな仮説 → データ → ……」と繰り返される学習プロセスが必要なのだ。この戦略思考に役立つ3つのテクニックがある。
つねに「診断・基本方針・行動」の3要素に立ち返る習慣を身につければ、戦略が脱線することがなくなる。最初から3要素をすべて考えられなくても、1つだけでも思いつけば、ほかの2つへと思考が広がるはずだ。
「何をするか?」ではなく、「なぜするのか?」をつねに考える。
問題点を見極め、つねに意識することで、戦略に一貫性が出てくる。
十分に診断をせずに「これをやる」と決め打ちすると、良い戦略にはならない。
多くの人は最初の案に固執するが、最初の思いつきで戦略を立てるのは、悪い戦略の典型パターンだ。当初の案は「たたき台」だ。事実を確かめて、徹底的に見直し、弱点をえぐり出し、矛盾点を見つけて、たたき台を破壊することで、良い戦略が生まれる。
著者のルメルトは、頭の中で「バーチャル賢人会議」を行うという。師匠と仰ぐ人たちを頭の中で思い浮かべて、「師匠なら何と言うだろう?」と対話をする。こうすることで、示唆に富んだ的確な評価が得られるという。
いまやすべてのビジネスパーソンに求められている「戦略を考える力」を身につけるうえで、本書は役立つはずだ。
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