30歳「地方で薄給だった」彼女が上京で開いた道 地方は地方で東京は東京で生きづらさはある

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高校入学後はさすがに母親の宗教の手伝いから離れてアルバイトをしようとしたが、咲希さんには吃音があってうまく話せず、ことごとく面接に落ちてしまった。しかし、インタビュー中、咲希さんの吃音が気になることはなかった。バイトはできなかったが、毎月のお小遣いが3000円にまでアップした。友達とゲームセンターで遊ぶこともあったが、家の門限が17時だったため、あまり長くは遊べなかった。

「高校は進学する人と就職する人、半々くらいでした。進学する気はなかったし、とくにやりたい仕事もなかったのですが、とりあえず就活をして、地元のデパートの内定が出ました。でも、正社員ではなく契約社員でボーナスもなし。初任給は手取りで月12万円でした」

月12万円という数字に愕然としたが、地方なのでこの給与でも生活していけるらしい。確かに筆者の地元でも、手取りが月12万〜13万円の会社員は多い。しかし、その分家賃も安く、家賃3万円も出せばそれなりの部屋に住める。

1年目は実家から通って毎月家に2万〜3万円入れ、翌年から一人暮らしを始めた。両親の仲が悪く、とにかく家を出たかったからだ。親には一人暮らしを反対されたため、半ば強引に出て行った。そして、ワンルームロフト付きで2万5000円の部屋を借り、一人暮らしを開始した。休日は当時付き合っていた彼とデートをして過ごした。

転職で思い切って上京

それなりに楽しい社会人生活を送っていたが、3年ほど勤めたときシフトを減らされ、残業代も未払いとなり、月の手取りが10万円を切ってしまった。いくら地方で家賃が安いとは言え、さすがにこの収入では生活できない。退職して職業訓練校に通い、ITに関する勉強をした後、東京でITエンジニアの仕事を見つけた。上京の引っ越し費用をすべて会社が負担してくれるというので、思い切って上京することにした。交際中だった彼も数カ月後、東京で就職したので同棲を始めた。

「でも、東京での生活に慣れるのは大変でした。満員電車での通勤も苦痛だったし、職業訓練校ではざっくりと基礎の部分しかITの勉強をしていなかったので、まったく使い物にならなくて……。手取りは18万円で家賃は8万5000円。家賃は彼と折半しました」

エンジニアの仕事が合わなかったのと、生活をしていくことに必死で、ストレスから体調を崩してしまった咲希さん。1年で退職し、事務系の仕事に転職。顧客情報の入力が主な仕事で、エンジニアよりかは向いている仕事だと感じた。手取りも月24万円にアップした。そして、同棲していた彼も給与が上がったので、家賃は彼のほうが多めに払ってくれるようになった。

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