30歳「地方で薄給だった」彼女が上京で開いた道 地方は地方で東京は東京で生きづらさはある

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「でも、28歳の頃、彼と別れてしまいました。エンジニア時代、体調を崩して寝込んでいたとき、支えてはくれたんですが、なかなか回復しなかったのが彼にとって負担だったみたいで、そこから少しずつ関係が悪くなっていきました。『死ね!』と暴言を吐かれたこともあって。そして、彼が浮気をしてしまって完全に終わりました。私が部屋を出ていく形で、家具や電化製品は半分ずつ分けました」

貯金は30万円。もっと貯めたい

彼と別れてからは8万5000円の部屋で一人暮らしを開始。ところが、時代がペーパーレスに突入し、それまで咲希さんの仕事だった紙ベースの仕事がなくなっていった。やることがなくなり、転職せざるをえない状況になってしまった。3度目の転職でも事務職を選んだ。

「ただ、この会社も1年半ほどで退職しました。ボーナスが出て収入的には安定していました。でも、他部署から来た人がパソコンをうまく使えず、私が勉強会を開くことになってしまって……。パソコンの使い方を教える仕事がしたいわけじゃないので、また転職することにしました」

そして今、総務の仕事に転職して2日目という状態だ。派遣社員だが、月収28万〜30万ほどもらえる予定だという。

転職の多い咲希さん。地方から上京してきて、身近に友達はいるのだろうかと思ったが、下町の飲み屋に行くと気軽に話しかけてくれる人がいて、友達はできたそうだ。また、お酒も大量に飲むわけではなく、ごちそうしてくれる人もいるため、飲み代もそれほどかかっていない。

「あまりお金、使っていないんです。化粧品も服も、最低限のものでじゅうぶん。マツエクやネイルも3カ月に1度行ければいいという感じ。メンテナンスが面倒くさいし、飽きっぽい性格なので。

最近のマイブームは着物ですが、高くても1万円ほどの着物しか買いません。安いものだと3000円からあるし。でも、貯金は30万円ほどしかないので、今後もっと貯めていきたいです。もし、お金が貯まったら海外旅行に行ってみたいです。今はまず、新しい仕事を覚えて落ち着きたいです。彼氏がいた頃は結婚する予定だったけど、今は結婚願望がないです」

終始淡々と語っていた咲希さん。地方での生きづらさと東京での生きづらさ、両方を体験している。ときどき地元に帰って妹や友達に会うことはあるが、親とは折り合いが悪いため、上京以来一度も会っていない。咲希さんは今後も東京で暮らし続けたいという。

彼女はエンジニア時代、体を壊している。東京で1人で生きていくことは時として試練や挫折もある。少し自信のなさそうな雰囲気を醸し出していた咲希さんだったが、芯はとても強い女性であることを感じ取れた。

そして、彼女のような女性が都会にはたくさんいて、それぞれみんな葛藤を抱えていることが推測される。得られる収入も生活の仕方も価値観も、地方と東京はまったく異なる。私も含め、地方出身者は都会で心をすり減らすことに慣れ、生き残るための知恵を身に付けられた人は適応して生きていくのだ。

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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