中核のスーパーが大不振のイオン、拡大路線と決別も出足から難航の兆し《特集・流通大乱》


GMSの売り場改革 立ちふさがる部門の壁

そこで出てきたのが、商圏特性に合わない売り場を持つ地方の中小型GMSの存在だ。そして「中小型GMSの問題を明確に意識したのは、去年の2月くらい。それまではまったく手がつけられていなかった」(豊島専務)。

「まずは商圏特性を把握し、年齢層から、売り場のモデルを構築する」。イオンリテールの村井正平社長は、GMSの売り場改革についてこう述べる。

イオンが考えるGMSの売り場モデルは大きく二つ。一つは従来からのモール型の標準店。30~40歳の団塊ジュニア向けだ。もう一つはその上の層をターゲットにした新しいモデルだ。高年齢層向けに商品配置を見直し、たとえば自転車売り場の半数を電動自転車にする。

現在、イオンのGMSは国内に437店(08年8月中間期段階)。そのうちSC内出店ではない単独GMS店舗は全体の半分ほどを占める。さらにそのうちの約100店舗が、この二つ目のコンセプトに当てはまる店舗だという。

新しいモデルでは、地域特有の衣料の柄物であったり、調味料であったりしているものを組み入れ、店舗ごとに違いを出していく計画だ。ただ、コンセプトをモデル化することで、完全な個店別対応にするよりもコストを抑えることができる。

これでGMSを本当に救えるのか。コンサルティング業務を行うオチマーケティングオフィスの生地(おち)雅之社長は、GMSは「来店客の生活シーンに合わせた売り場づくりができていない」と指摘する。いまだ繰り返される決まり文句だ。

この点については、イオンも少しずつ取り組み始めている。その一つがトラベル売り場。旅行カバンにポーチ、コンセントプラグ、そして非常食に至るまで、旅行に必要なものを一通りそろえている。こういった商品の横断的な売り場展開を今後、各売り場で増やしていくという。

だが、衣食住の枠を越えた売り場展開を必要とするこの取り組みには、部門の壁が障害となる。

たとえば、おもちゃからファッション、雑貨、アミューズメントコーナーまでも取りそろえたキッズ共和国。03年に導入され、部門に縛られない新しい売り場の展開として注目された。だが、ふたを開けてみると、子ども衣料を中心に据え、新商品として積極販売する予定だった、玩具等を整理するトイボックスは、売り場の隅に追いやられていた。

キッズ共和国は組織上、衣料品部門に位置づけられている。そのため同担当者は、衣料部門貢献度の高い商品を積極的に売ろうとする。人事評価も部門の売り上げ実績が評価対象にあるため、部門外の商品は冷遇しがちになる。

商品への自信が不足 来店促す商品を模索

商品の横断的な売り場展開を可能にするには、この部門の壁をなくすしかない。今後、社内公募で部門の枠を越えたプロジェクトを募り、並行して店舗で展開。既存部門の売り場と競争させることで、部門の壁を徐々になくしていく計画だ。

「衣料品に手を入れないと、GMSはどうにもならない」。村井社長は言う。

実際、衣料品は特に苦戦している分野だ。イオンリテールの今期の衣料品は、第3四半期までで前年同期比4・4%減少している。同じくGMS業態のマイカルでも衣料品は5・7%減。増収となっている食料品や、2%台の減少にとどまる住関連商品に比べ、その減少幅は大きい。

衣料品では商品開発に力を注ぐ。着た瞬間からの暖かさを売りにした肌着「ヒートファクト」。売り場で広く展開したことも手伝い、当初計画を超える売れ行きを見せている。「12月になって寒くなったこともあって、ヒートファクトが非常に売れている。おかげで肌着は7割くらい増えている手応えだ」。ジャスコの婦人服売り場責任者は言う。だが、「ケタが一つ違う」(村井社長)。

ユニクロで販売されている同様の商品の「ヒートテック」は、今秋冬物で2800万枚を完売した。「こういった新機軸の商品を開発したのは、ユニクロとイオンだけ。そこまでは一緒だけど、そのあとが悪い。(イオンは)200万枚売れたということで満足している」(村井社長)。

この言葉の背景には、昨年4月に販売を開始した「クーリッシュファクト」の苦い経験がある。着用するとひんやりする肌着として店頭に並んだこの商品はひと月で完売した。当初見込みを超えてしまったため、その後2カ月間、商品が途絶えてしまい、結果、最も販売が伸びる時期を逃してしまった。

「これだけの枚数はいけるという覚悟のほどが、開発側にも販売側にも足りない」(村井社長)。だから品切れして販売機会を逃す。

商品開発と販売が連動してキラーコンテンツを作ることができるか。イオンがトップシェアを誇るランドセルがいい例だ。同商品は年間約30万個という販売数で、小学生の3人に1人がイオンのランドセルを背負っている計算だ。24色で、買い換えを意識し、3万円前後の価格設定とした。「ランドセルを買いにジャスコへ」。そんなニーズを生み出し、同時に学習机や文房具などの販売可能性も上げる好循環を生み出す。

ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
  • 岡本幸一郎の自動車情報発信局
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
銀行 地殻変動<br>先で待つ「不良債権地獄」の恐怖

コロナ危機を受け、銀行は政府の支援の下、積極的に「傘」を差し出し、融資をしています。しかし融資先には「危ない企業」も含まれ、下手をすれば不良債権によって屋台骨を揺るがしかねません。自ら大きく変わり始めた銀行の近未来を占います。