中核のスーパーが大不振のイオン、拡大路線と決別も出足から難航の兆し《特集・流通大乱》
総合スーパー(GMS)が営業減益の最大の要因--。1月7日に発表されたイオンの第3四半期の決算。営業利益は659億円と前年同期比で147億円の減益となった。そのうちGMS事業の減益は、およそ半分の78億円に上る。
流通2強のもう一角、セブン&アイ・ホールディングスの営業利益が同2182億円と、4・4%増益になったのとは対照的だ。セブン&アイは中核事業としてコンビニ事業を持つ。一方、イオンの売上高に占める総合小売業の割合は7割超。GMS事業のウエートの差が、2強の明暗を分けた。
イオンは昨年10月、1000品目の一斉値下げを実施。さらに11月に円高還元による値下げも追加実施した。しかし、売り上げ増に直結しない。イオン単体のGMS事業を統括するイオンリテールの既存店売上高は、11月に前年同月比4・8%減と今期の最低水準を記録。消費者は「安くなった商品は買うが、余分なものは購入しない」(家坂有朋イオンリテール専務)。
マイカル、ダイエーなどを次々とグループに取り込み、拡大路線に邁進してきたイオン。だが、消費低迷による業況悪化を受け、その路線転換を模索している。2008年2月に発表した方針では、これまで3年間1兆2000億円規模で行ってきた設備投資を今後7割の水準に抑制。また、資金調達の多様化、資産のスリム化のために、不動産流動化を積極的に進める考えを打ち出した。
焦点となるGMS事業では、売り場改革とともに、不採算店の閉鎖や業態転換といった“外科手術”を断行する。対象となる不採算店は、08年4月時点では100店としていたが、7月には125店へ拡大した。さらに追加の可能性も大きい。
この改革案については、市場関係者の間では評価する向きが多い。昨年11月21日に格付けを従来の「A+安定的」から「A+ネガティブ」へ下げた格付投資情報センターも、新たな投資額が減り、有利子負債の圧縮が図れる点から、「改革が実行できれば評価できる」(格付投資情報センター・山本由明チームリーダー)としている。
だが、当初3500億円規模を予定していた不動産流動化は、不動産市況の悪化を受けて思うように進んでいない。今期は昨年秋に開業した大型ショッピングセンター(SC)越谷レイクタウンの800億円と、その他の物件で100億円程度にとどまり、「来年度以降に持ち越される」(豊島正明イオン専務)見通しだ。
そして最大の問題は、中核のGMS事業の収益改善が遅れていることだ。格付投資情報センターの山本氏は「改革が達成されなかったとなると、もう一段格付けを下げることも考えないといけない」と付け加える。
08年2月期時点で、イオンのGMSを中核とする総合小売業の利益率はわずか1・4%。営業利益ベースでは全体の2割台にすぎない。これまでの拡大路線を“致命傷”にさせないためにも、同事業の収益改善は、イオンにとって至上命題なのだ。