「不幸なエンジニア」と幸福なエンジニアの差 幸福学者・前野隆司さんインタビュー
20代ならまだいいです。でも、どこかで自分がその状況を変えないと。30代になっても40代になってもそのままで、50代になってもまだやらされ感で仕事をしているなら、それはとても悲惨なことです。
では、どうすれば若手エンジニアは「やらされ感」を払拭できるのか。大切なのは、視点を変えること。具体的なポイントは、一つ上のポジションに立ったつもりで仕事の全体像を把握してみることです。
いま管理職でない人なら、課長になったつもりで。課長なら、部長になったつもりで。部長なら、社長になったつもりで自分が任されている仕事を俯瞰的に捉え直してみましょう。すると、それが何のための仕事であるか、どうしたらもっと改善できるのか、視野が広がっていきませんか?
そうしたら、自分なりの工夫を仕事の中で増やしていきましょう。どんな小さなことでもいいから、自分の創造性を発揮していくことが幸せを感じる鍵になります。場合によっては上司に「もっとこうした方がいい」と改善提案をしてみるのもいい。ただの批判でなければ、歓迎されると思いますよ。
不幸な人と幸せな人の違いは、「部分」を見るか、「全体」を見るかです。不幸な人は物事のパーツだけを見て悲観的になり、悩みにとらわれて立ち止まってしまいがちです。
幸せな人は物事の全体を見ているから、例え部分的に悪いことがあったとしても俯瞰的に改善策を見つけられますし楽観的でいられます。これは、仕事でも人生でも同じことが言えます。
幸せな人は「自分の強み」を知っている
また、人が幸せを感じるためには自分らしさを発揮する「創造性」に加えて、人から感謝されるということが欠かせません。僕が科学者ではなくエンジニアになることを選んだ理由も、ここにあります。
僕はキヤノンにいた時、特許を書いて新しいものを世の中に送り出す「創造性」と、自分が作ったものがちゃんとプロダクトになって人から「ありがとう」と言われることが、何よりの幸せだと感じていました。どちらの喜びも得られるエンジニアの仕事は「なんて最高なんだ!」と思っています。
当時から「幸せ」をエンジニアリングする研究には興味があったので、大学に活動の場を移し、30年かけて本当にやりたかったこと(幸福工学)ができる環境をつくっていきました。今は57歳ですけど、20代の頃より100倍くらいハッピーです。