リクルートは、ネット企業に勝てるのか?

リクルートの若き経営室室長と語る(下)

アクの強い人材のまとめ方

 ――今村さんは37歳でリクルートホールディングスの経営企画と人事統括の室長であり、リクルートのグループ会社では執行役員ですが、これはそうとうスピード出世なんですか。それともリクルートではありふれたことですか。

今村:早いかもしれませんが、私より年下も何人かいます。

――それにしても、なんでこんなに出世が早かったと思いますか。

今村:もしかしたら、リクルートの中でもリクルートっぽくないタイプだからかもしれません。リクルートには「自分はこうしたい」という意見を持った、我が強い人が多い。その中ではけっこうバランサーだと思うのです。Aさん、Bさん、Cさんの意見を統合してひとつの結論に持っていくことに喜びを感じたり、そこで介在価値を発揮することに意義を感じる。

それに気づいたのは経営企画室に異動してからです。それまでは僕も我が強くて、営業でも「売れればいいんだろ」みたいな感じで上司にも相談せずに勝手に売って、成績を上げて表彰されたりしていた。でも経営企画室に来たらいきなり視座がグッと上がって、ひとりじゃ何もできないことがわかった。そのあたりから周りの人たちを統合して、バランスをとって、会社の意思決定に導く仕事が面白くなってきました。もしかしたらそこが評価されたのかもしれません。そういう意味では入社5年めの異動はターニングポイントでした。

――マネジメントの才能があったということですね。リクルートに多いという、アクの強い人たちをまとめるコツは何ですか。

今村:まとめようと思いすぎないことですね。スポーツでいうと合気道みたいな感じです。要は人の力をうまくそのまま使って、流れに変えていく。力づくで自分の思いどおりに捻じ曲げようとしすぎず、それぞれのいいところをうまく吸収して、飄々と揺れながらも最後はひとつの結論に持っていく。そのためには、会議の前にこんな質問をあの人にしておこうとか、会議ではこの人の後で必ずこの人に質問しようとか考えますね。意思決定の物流屋をやっているような感覚です。

――スター選手から、うまく監督に脱皮できたタイプなんですね。

瀧本:リクルートでは、選手として活躍した人の中から、マネジメントや経営に適性のある人を戦略的に上に上げている感じがしますね。だから「現場ではあまり売れなかったけれど、経営企画に来た途端に大活躍」みたいな人はいませんね。

今村:たまたま僕はこういうタイプですが、これからも同じタイプが求められるとは限りません。もしかしたら経営企画としての我の強さを持った戦略家タイプがふさわしいかもしれない。それは時代時代で、もしくはタイミング次第で変わっていくと思います。

瀧本:そういう面では本当にいろんな人を採っていますよね。僕の知人は大学で半導体の研究をしていて、コンサルティング会社のアクセンチュアを経てリクルートに入ったのですが、その人は「数字が伸びるならどんどん突撃すればいい」という指示をする幹部に対して、「冷静に数字を積み上げてみると、絶対無理です。ここまでの範囲が現実的ですよ」みたいな定量的な話ができる。それをまた上司も「確かにそうだな」って素直に認めるんですよね。リクルートってモノカルチャーのようでいて、実は非常にダイバーシティで人を採っているんだなというのは僕も内側に来て気づいたことです。

今村:それはうれしいですね。もしかしたら自分にはいろいろな人たちを統合する力があるのかもしれないと言いましたが、それは僕からするとダイバーシティマネジメントそのものですから。

――面白いキャリアを築くために、同世代の人たちにメッセージがあれば。

今村:僕自身、最近、怠けているところがあるので、自分に喝を入れる意味でも言いますと、「この人は優秀だなあ」とか、「ベンチマークにしたいな」と思う人と仲良くする必要があると思います。人間が学ぶ機会は、本を読む、人と話すなど、何パターンかしかない。中でも特に人と話すことが重要だと、リクルートに入って痛感しています。社内の人だけでなく社外の優秀な人とか、ちょっと興味があるだけの人でもいいので、飲みに行くでも何でもいいから、できるだけつながりを持つようにする。「人」とのつながりに幅を持たせるようにしたほうがいいと思っています。

それからリクルートの人間にもよく言うことですが、やっぱり僕らの世代は変化する必要がある。変化に対応するだけじゃなくて、自分自身が変身しなきゃいけない。そのために、まずは目の前の仕事において、新しいチャレンジに一歩踏み出さなければいけないと思っています。

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