摂食障害に悩む人の意外と知られてない真実 原因は十人十色、当事者に寄り添う気持ちを

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「例えば足を怪我したときに松葉杖をついていたら、周りの人は親切にしてくれますよね。だけど、心が傷ついても見た目に変化がないので誰もかまってくれません。他の人と同じようにできなければ、『何やってるんだ』と責められてしまう。そうではなくて、できるようになるまで一緒にサポートしてくれる人が必要なんです」(鈴木裕也さん)

鈴木さんは摂食障害の治療の際には必ず家族にも病院に来てもらい、一緒に治療に臨んでもらうといいます。

男性の摂食障害経験者である渋谷哲生さんの母親は、摂食障害の子どもを持つ親が参加する家族会に参加して、親子のコミュニケーションのあり方が大きく変わりました。

「母は僕のことを否定するのではなく、今僕ができることを応援しようというマインドに切り替えくれました。母親自身もひとりで悩んでいたので、家族会では同じような悩みを抱えている人と悩みを共有できただけでもすごく救われたと言っていました。一緒にいる時間が長い親やパートナーなどとの関係性は重要なので、家族会などで家族が悩みを吐き出して、心に余裕を持てることも大切だと思います」

摂食障害の治療においては家族が知識を持つこと、心にゆとりをもつことが大切です。そして、そのための家族のケアも重要なのです。

「病気」と「人」を分けて考えてほしい

摂食障害当事者である金子浩子さんは、「摂食障害という病気が“市民権”を持つようになってほしい」と語ります。

「摂食障害で苦しむ人を社会全体で支えて、向き合っていこうと思ってもらえたら嬉しいです。食事を少ししか食べられない人がいても、逆に食べ過ぎる人がいても、心の病気のせいという場合もあると知ってもらいたいです。

摂食障害は病気のひとつであって、意思だけで何とかできるものではありません。その人自身が悪いわけではないことを多くの人に知ってもらえたら、当事者も病気のことを話しやすくなるし、生きやすくなるのではないでしょうか」

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「リディラバジャーナル」編集部

「リディラバジャーナル」は社会問題の現場を訪れるスタディツアーを提供しているリディラバが2018年1月に立ち上げたウェブメディア。社会問題を見続けてきたリディラバの知見をもとに、問題の背景にある社会構造まで踏み込んだ、特集形式で記事を提供する有料メディアです。

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