東大カリスマ教授の「教育論+メディア論」 塩野誠×松尾豊 特別対談(下)
若い頃は、全ターン投資しろ
塩野:最後に、今から社会に出ようとする就職活動中の学生に向けてお願いします。
松尾:選択肢を増やすというのは、つねにやったほうがいい。それから、自分がやりたいことと、周りとの調整も重要ですね。妥協できる範囲で、やりたいことを探すという努力もやったほうがいい。ここまではリスクを気にせずにできる。あとは、勇気がある人は、やりたい選択肢をとってください。
塩野:では、逆にこれから社会に出て行こうとする子を持つ親に向けてはいかがでしょう。東洋経済さんでも、早いうちに海外に行かせようとか、グローバル教育だとか言われていると思うのですが、メジャーリーグを目指せるような優秀な子は、どうしたら育てられるのでしょうか?
松尾:そういう世界があるということを、早いうちから教えてあげたほうがいいと思いますね。ただ、あとは本人の問題じゃないかな。周りがどうこう言うことでもないと思う。たとえば、信長の野望とかやっていると、最初の頃は全ターン、投資して回収してまた全部投資してという繰り返しなのですね。同じように、若いうちは全エネルギーを使って投資していくのがいいと思いますよ。
Gunosyがメディアに与える影響
――最後に、Gunosyについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
松尾:Gunosyは、いい意味で彼が勝手にやっているのです。研究室の環境をうまく使いながら、頑張っているなあという気がします。もう特に言うことはないので、ぜひ成功例になってほしいですね。
――Gunosyがメディアに与える影響は何でしょうか?
松尾:メディアの役割は2つあると思います。ひとつは、その人が欲しい情報を届けること。もうひとつは、共通の認識を作ること。あれに載っていましたねとか、あれが問題ですよねと、合意を作ることによって、コミュニケーションのハードルがずいぶん下がる。新聞というのは、後者がうまくできていたと思うのですが、今はネット主流になってしまった。まさにパーソナライズというのは、共通の認識を壊しているわけです。今こそ、新しいメディアが必要なのだと思います。