ブーム後の「ケータイ小説」が今も読まれる必然 ガラケー時代から進化、ジャンルとして定着

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ケータイ小説から書籍化されたヒット作。表紙デザイン、帯コピーから内容がおおよそわかるのが特徴的だ(写真:編集部撮影)
「ケータイ小説」のイメージが、2000年代半ばに大ヒットした『DeepLove』『恋空』あたりから更新されていない人も多いだろう。しかし実は「ブーム」が去ったあとも、10代女子に支持される「ジャンル」として定着していることを、ほとんどの大人は知らないのではないか。
そして、ガラケーのiモード上のサイトからスマホのアプリ/ウェブへと拠点を移した2010年代後半のケータイ小説は、かつてのイメージとはまったく異なる物語の内容や書籍パッケージに変貌し、ヒット作がコンスタントに生まれている。
ジャンル創生から20年が経過しようとしているなか「ケータイ小説」はいかなる進化をとげたのか。「ガラケー時代」から女性向け小説投稿サイト人気を牽引してきた最大手、スターツ出版の事例を手がかりに、ライターの飯田一史氏が2回にわたって解説する。

例えば会員数89万人の小説投稿サイト「野いちご」を運営し、人気作品を書籍化しているスターツ出版からは、沖田円『僕は何度でも、きみに初めての恋をする。』が25万部、櫻井千姫『天国までの49日間』が18万部、櫻いいよ『交換ウソ日記』17万部。いぬじゅん『いつか、眠りにつく日』14万部、小鳥居ほたる『記憶喪失の君と、君だけを忘れてしまった僕。』はデビュー作ながら半年で5万部等々、近年に限ってもヒット作が続いている。

人気作品の変化で10代女子の今が見える

その昔の書籍化されたケータイ小説といえば、風景やハートマークなどを使ったイラストを表紙にしたハードカバー、物語内容は実話をうたい、レイプや暴力、ドラッグ、水商売の世界などを配しながら恋愛の切なさを描くようなもので、横書きで改行が多いもの、というイメージが強いだろう。

だが今では、それらは大きく変化している。少女マンガテイストのイラストが表紙のソフトカバー単行本か文庫、ローティーン向けの一部作品を除けば、ほぼ横書きではなく縦書きで書籍化されている。内容的にはホラーを除けば性・暴力に関する過激な描写はほとんどなく、キスまでの作品が大半だ。

世の中には「ファン/ユーザーの平均年齢が毎年1歳ずつ上がっていく」というジャンル/サービスもあるが、「野いちご」はつねに新しく10代の読者を迎え、送り出してきた。そうした人気作品の変化を見れば、10代女子の「今」が見えると言っても過言ではない。

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