ブーム後の「ケータイ小説」が今も読まれる必然 ガラケー時代から進化、ジャンルとして定着

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アプリを見ると、トップページに表示される作品のカテゴリーは「切ない ピュア」「溺愛 日々」「涙 感動」「学園ホラー」「暴走族 元姫」の5つ。これが人気作品のカテゴリーである。

同社でのケータイ小説の書籍化の始まりは、単行本サイズで刊行した『恋空』をはじめとする実話系から。そこからリアルというより、やや妄想度の強い少女マンガ風のものが人気が移り変わる2009年頃にケータイ小説文庫を立ち上げる。これは現在「ピンクレーベル」と呼ばれている。

その後「甘いだけじゃないものが読みたい」という読者の声が増え、サイト上でも作品を分類するタグに「泣ける」が目立つようになってきたため、2011年に『ブルーレーベル』を創刊した。

さらにホラーがつねに一定の人気があるということで2013年に「ブラックレーベル」を、中高生向けというより高校生・大学生・新社会人層向けのライト文芸レーベルとして、2015年に「スターツ出版文庫」を、ピンクレーベルよりも少しリアル寄りの、中学生が「先輩の先輩くらいにいそう!」と思えるような恋愛ものを好む読者のために2017年に「野いちご文庫」を創刊した。

人気ジャンル「恋愛」「泣ける」「怖い」「暴走族」!?

毎日新聞社と全国学校図書館協議会が毎年行っている「学校読書調査」を見ると、小学生女子が読んだ本の上位は『ヘレン・ケラー』『アンネ・フランク』『ナイチンゲール』『赤毛のアン』といった世界の偉人・女性編および児童文学のクラシックが並ぶ。

しかし中高生になるとそうした「親や教師が推薦した本」の存在感は薄れ、「自分で選んだ本」が上位に来るようになる。

中高生女子には、ジャンルで言えば、HoneyWorksの『告白予行練習』をはじめとする「恋愛もの」、住野よる『君の膵臓をたべたい』をはじめとする「泣ける」話、いしかわえみによる「りぼん」連載のホラーマンガのノベライズ『絶叫学級』などの「怖い」話が鉄板だ(『学校図書館』2018.11号)。

「野いちご」の人気カテゴリーは「切ない ピュア」「溺愛 日々」「涙 感動」「学園ホラー」」「暴走族 元姫」であり、こうした傾向とおおむね合致している。

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