「追い出し部屋」で40代女性が見た異様な光景

社員の「自主退職」を促す会社のズル賢さ

さすがに耐えかねて、「パワハラではないか」と相談室に相談し、調査委員会による聞き取りが行われた。だが、この女性がパワハラとして告発した上司の言動は、パワハラとは断定しがたいという結論が出た。まず、いずれの言動も上司が否定した。そのうえ、実際に郵便物を投げて渡したとしても、急いでいたからかもしれないし、「邪魔」「死ねばいいのに」などの暴言も独り言だったかもしれないというのが調査委員会の見解だった。

調査委員会の出した結論に落胆した女性は夜眠れなくなり、朝出勤しようとすると吐き気や動悸が出現するようになった。そのため、私の外来を受診し、「パニック障害」の診断書を提出して休職した。3カ月後に復職したが、例の上司にあいさつしても無視され、すれ違うたびにそっぽを向かれた。仕事もろくに与えられず、自分はもはや必要とされていないように感じたという。そのため、居づらくなって異動願を出し、認められた。 

ギスギスした雰囲気が漂う異動先

異動先は、うつ病やパニック障害などで休職していた社員ばかりを集めた部署だった。この女性と同様に、職場で強いストレスを感じて心身に不調をきたした社員ばかりで、いじめやパワハラの被害者もいたはずだ。

もしかしたら、百貨店が進めるリストラの影響で、職場全体にいじめやパワハラが起こりやすい雰囲気が漂っていたのかもしれず、ある意味では、この部署の社員はみなリストラ策の被害者ともいえる。そう考えれば、同じ境遇の社員同士いたわり合いながら働いても不思議ではない。

ところが、実態は真逆のようだ。この部署では、みな互いに攻撃し合う。それぞれが「自分は前の部署でひどい目に遭って心を病んだ被害者なのだから、それなりに配慮してもらって当然」という態度を示すので、仕事の分担をめぐってしばしば言い争いになる。

中には、自分が要求する配慮を受け入れてもらえないと、怒り出し、それ以降口をきかなくなる社員もいる。配慮してくれなかった相手を「冷たい」「思いやりがない」「そんなだから、職場不適応になる」などと誹謗中傷する社員もいて、つねにギスギスした雰囲気が漂っているという。

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