卓球「Tリーグ」初年度から見えた期待と課題 初代王者は男子が木下、女子が日本生命に

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初年度を無事に閉幕したTリーグだが、運営面には課題も残った。レギュラーシーズン全84試合を終えた時点で、1試合の平均入場者数は、松下浩二チェアマンが目標として掲げていた2000人を下回る約1200人。特に地方開催の試合では、収容人数の関係もあり、観客が500人前後にとどまることもあった。

松下チェアマンによると、初年度のリーグ運営費用は20億円規模だといい、2000人以上収容できる体育館の確保が難しかったという。理想としていた土日開催も厳しく、思うように観客を増やすことができなかった。それでも来シーズンはスポンサーの支援などによる収入で収支のメドも立ったそうで、初年度を大きく上回る入場者数を狙っていく構えだ。

さらに「世界No.1の卓球リーグを実現する」という理念のもとTリーグを設立した中で、世界ランキング上位の中国人選手が参加しなかったことも、松下チェアマンは課題に挙げた。

「多くの国々の選手が参加しているという意味では、世界No.1のリーグといえるかもしれません。ですが、やはり五輪や世界卓球を制している中国勢が加入してこそ、世界一強いといえる。そのために、今年から中国の上位ランカーたちと積極的に交渉していきたいと思っています」

また、選手の立場である水谷からは、Tリーグ発展のために「チーム数を最低6、できれば8に増やしてほしい」と提案。それに対し松下氏は「私もシーズン途中からそう思っていた」と話し、「来季はスケジューリングの問題で無理ですが、なんとか今年中に男女2チームずつ増やし、2020-2021シーズンからは男女ともに6チームでリーグ戦をできるようにしたい」と構想を明かした。

「Tリーガーになりたい」と思えるリーグに

課題が挙がるとはいえ、Tリーグはまだ初年度を終えたばかり。ここから来季に向け、実際に1シーズン通して運営して浮き彫りになった問題点を、1つひとつ解決していくしかない。

その一方で、海外遠征で移動に多大な時間を要していた日本人選手の試合数・練習環境の確保や、卓球の「見るスポーツ」としての需要拡大、そして競技人口の増加など、Tリーグ開催によるメリットも確実にあった。

水谷が「将来的に卓球を始めた子供たちが“Tリーグに出たい”と憧れを持ってもらえるようにしたい」と話すように、来季はさらに「見にいきたい」「この舞台に上がりたい」と思えるようなリーグの発展を期待したい。

(文中一部敬称略)

佐藤 主祥 フリーライター

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さとう かずよし / Kazuyoshi Sato

1991年、宮城県生まれ。新聞の専売社員、マスコミ系の専門学校を経て、独立。スポーツや新しい働き方を中心に、取材・執筆活動を続けている。学生時代は卓球部に6年間所属し、団体戦・個人戦で県大会出場を経験。野球を観ながらお酒を飲むことが何よりの喜び。

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