川島永嗣「36歳日本人GK」の危機感と日々の葛藤 楢崎の引退メールに涙、フランスで思うこと

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楢崎や川口との現役時代を振り返る川島永嗣(筆者撮影)

その川口の1つ年下の楢崎はつねに好敵手としてしのぎを削り続けた。川島は2004~2006年の3シーズンにわたって名古屋に在籍し、楢崎とポジションを争った。

当時、日本代表正守護神に君臨していた6学年上の先輩の壁は高く、そう簡単に出番は得られなかったが、「3年間ずっと一緒にやらせてもらって、すぐ横でいろんなものを学ばせてもらったことは僕の財産です」と本人は言い切る。

「ナラさんはとにかく技術が高かった。一緒にやってきた日本人GKの中でも圧倒的でした。『なんでこの人、こんなプレーできるのかな』と疑問に思いながら、ウォーミングアップのキャッチからボールコントロールまでじっと見ていました。

その技術を支えるフィジカルも強かった。能活さんは瞬発的なバネがあるイメージだけど、ナラさんの場合は全体的なパワーを備えている感じだった。あの人を超えないと日本代表にもなれないし、目指していた海外にも行けないと思って、どうにかして超えてやろうと日々、考えていました」と川島は野心に満ちあふれていた若かりし日を振り返る。

川口と楢崎も「永嗣ほどギラギラしていた若手GKは見たことがない」と口をそろえていた。頭抜けた向上心を持つ男が3人そろったからこそ、2000年代後半から2010年代にかけての日本代表GK陣は非常に頼もしかったのだ。

今の日本人GKに対して感じる危機感

現在、日本人守護神を取り巻く環境は険しくなる一方だ。Jリーグの外国人枠拡大に伴い、強豪クラブのほとんどが外国人GKを補強。韓国代表GKチョン・ソンリョン(川崎)、オーストラリア代表GKミッチェル・ランゲラク(名古屋)といった面々がゴールマウスを守るのが当たり前の光景になった。

これに対しては現役を退いた川口や楢崎も強い危機感を募らせていたが、川島も「『日本人GKのレベルが低い』と言われるのは以前から好きじゃなかった。日本人GKももっとやれると思うし、自分はずっとそれを証明したいと思ってやってきた。今もその気持ちは変わらない」と改めて語気を強めている。

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