IHI、不正発見の機会をみすみす逃した重い代償

無資格検査の内部告発が1年前にあったが…

瑞穂工場での新人検査員の増員、検査結果を書き込む項目の増加などで現場が繁忙になってきた中で、「『もう1人で走れるじゃないか』『技量があるからいいだろう』とOJTの現場で個々のトレーナーが判断し、無資格の検査員に検査をさせていた。そのへんの規程が曖昧だった」(盛田氏)。OJTは最大で新人3人に対し1人のトレーナーで行われているという。

IHIによれば、エンジン検査には大きく2つあるのだという。寸法が設計図どおりかを検査する「機能検査」と、表面に傷がないかを検査する「外観検査」だ。「検査作業の大半は外観検査が占める。外観検査は時間も手間もかかる」(盛田氏)。

機能検査は数値で把握できる一方、外観検査は数値では把握できない「官能検査」(視覚などの五感を用いて品質を判定する検査)である。それだけに、「OJTによる一子相伝(マンツーマン)で伝えていかないといけない」(盛田氏)。外観検査では特殊な溶剤を塗布し傷のある部分を蛍光塗料などで発光させる。こうした外観検査を検査員は「浸透探傷(しんとうたんしょう)」と呼ぶ。

企業体質としての問題

他方、エンジン納入先の米ゼネラル・エレクトリック(GE)や同インターナショナル・エアロ・エンジンズ(IAE)、航空各社が「安全上問題なし」とする報告をIHIに文書で行っているのは、納入時などにGEやIAE、航空各社が自社で独自に安全性チェックを行っているからである。

あるIHI幹部は、「整備事業そのものの利益規模がそもそも小さいこともあり、業績への影響はほとんどないだろう」と言う。心配なのは信頼低下だが、そもそもGEなど世界大手と共同開発体制を構築することで進めてきた事業である。「パートナーからは『今はとにかく歯を食いしばって必要な再発防止をしたうえで、早くリカバリーしろ』という声をちょうだいしている」(満岡社長)。これが事実ならば、再発防止体制を早期に構築できれば、信頼低下を食い止められるかもしれない。

ただ、無資格検査を発見できる機会をみすみす逃してきた過去を、IHIはどんなに反省しても反省しすぎるということはない。検査員の能力向上を優先し、自ら決めた手順の遵守が後回しになっていたという事実は、企業体質として問題があるといわざるをえない。

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