IHI、不正発見の機会をみすみす逃した重い代償

無資格検査の内部告発が1年前にあったが…

3月8日に緊急会見を開き、検査不正について謝罪をする満岡次郎社長(撮影:尾形文繁)

航空エンジン製造で国内最大手、IHIの満岡次郎社長が「民間航空機のエンジン整備事業で不正があった」と3月8日の会見で明らかにした。無資格者が検査をしたにもかかわらず、「有資格者が検査をした」と偽った不正は208件。ほかにエンジン組み立ての順序を規程通り行わなかった不正が3件あった。

 これまでに不正発見のチャンスは幾度もあったのに、IHIはことごとくその機会を生かせなかった。「いいきっかけはあったものの、私どもは残念ながら、機会としては見逃してしまった。(中略)再発防止にはそこの面も含めていきたい」(満岡社長)。

見過ごされた昨春の内部告発

最初の不正発見の機会は2017年秋だった。日産自動車やSUBARUで無資格検査が発覚したことを受けて、IHIは全事業部門に確認を指示した。ただそのときは「『気になっていることをぜひ声に出してください』という形のものをアンケート的にやっていった」(満岡社長)という呼びかけにすぎなかった。

次の不正発見の機会は約半年後の2018年春に訪れた。「実は『資格のない者が検査をやっている』という内部告発が2018年4月にあった」(航空・宇宙・防衛事業領域長の識名朝春常務)。その内部告発は、告発者を守るために外部機関に設置した「企業倫理ホットライン」に持ち込まれた。

この内部告発を受けて、IHI総務部は製造現場の総務担当に調査を指示した。現場でのヒアリングを行ったが、このときも無資格検査を見つけられなかった。「あのときもっと深掘りができていれば」と識名常務は悔やむ。現場でのヒアリングで「問題なし」となったために、内部告発は満岡社長の耳に入らなかった。「スクリーニングした(後の)ものしか私のもとには入ってきていなかった」(満岡社長)からだ。

さらに2018年夏にも不正に気づく機会があった。企業倫理ホットラインの状況は、通報時期や内容、調査結果が端的に社内向けのホームページに掲載されている。それは約3カ月おきに更新している。2018年7月に「検査資格に関する内部告発があった」という趣旨の情報が掲載されたのだ。

しかし「ホームページに出ていることはあとから(ようやく)確認できたというところ」(満岡社長)。つまり、情報更新時の昨年夏はおろか、つい最近まで気づいていなかったということだ。

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